制酸薬の使用はClostridium difficile腸炎のリスクを上げる
PPIとhospital acquired CDIとの関連を調べたmeta analysis。
23の観察研究、186033のケースを対象とし、10307人のCD腸炎が報告。
異質性が高かったのでrandom effect modelが使用されている。
・結果
PPI使用は入院中の CD腸炎のリスク:pooled odds ratio 1.81 (95% CI, 1.52-2.14)とPPIはCD腸炎のリスク高い。
ただ異質性は高く、暴露、study population、CDIのリスクが研究毎に違うことが原因。
とはいえ、PPIの使用は入院中の CD腸炎のリスクといえそう。
H2blockerとCD腸炎も関連性があることが示唆されている。
同様にメタアナリシスを施行。2人のレビューアーが独立に評価
研究の特性、調整された効果の推定値、質に関するデータを抽出。
データ:
201834人を対象に解析。H2 blockerの種類は記載なし
Group | Pooled Effect Estimate (95 % CI) | I2 % | Number of Observations |
All studies | 1.44 (1.22, 1.70) | 70.5 | 35 |
Case-control studies | 1.58 (1.28, 1.95) | 68.9 | 24 |
Cohort studies | 1.19 (0.87, 1.62) | 75.6 | 11 |
Asia | 1.86 (1.07, 3.22) | 0 | 2 |
Canada | 1.25 (0.97, 1.61) | 60.8 | 9 |
Europe | 1.43 (1.09, 1.89) | 39.3 | 7 |
USA | 1.51 (1.16, 1.95) | 65.1 | 17 |
Forest plot of the pooled proportion of Clostridium difficile cases that were exposed to antibiotics
抗生剤投与中は特にH2blockerによるCDIのリスクが増加
入院後14日の地点でのNNH: the number needed to harmは抗菌薬使用で58, 95% CI (37, 115) ,425, 95% CI (267, 848),
H2 blockerはCDI発症のリスクだが、特に入院中に抗菌薬を使用する患者でその傾向が顕著。
そして、今回CDIと制酸薬の関係を調べたmeta analisisがJAMA internal Medicineから発表。
・Data Sources
→ MEDLINE, EMBASE, the Cochrane Central Register, the Cochrane Database, and Web of Scienceと網羅している
制酸薬(PPIとH2 blocker)とCDI再発との関連を調べている。
・検索用語: Clostridium difficile, pseudomembranous colitis, proton pump inhibitor, and histamine H2 blocker.
・Study の選別
入院と外来は区別していない。
Case-control studies、コホート研究、臨床試験(制酸薬の有無とCDI再発を評価している)が対象
・データの抽出と解析
The Newcastle-Ottawa scaleを使用。
2人の評価者が独立に評価
オッズ比と95%信頼区間を検討。random effect modelを使用
・アウトカム
CDIの患者が再発するリスクと制酸薬が関連性があるか
・結果
16の観察研究が対象 7703人のCDIのうち1525人(19.8%)が再発。
・再発性のCDI
制酸薬使用 22.1% (892 of 4038 patients)
非制酸薬使用 17.3% (633 of 3665)
メタアナリシスでも制酸薬の使用は再発性CDIのリスク→オッズ比 [OR], 1.52; 95% CI, 1.20-1.94; P < .001
ただ、異質性は高い:I2 value of 64%.
年齢で調整し交絡因子を確認しても、制酸薬は再発性CDIのリスク(オッズ比 OR, 1.38; 95% CI, 1.08-1.76; P = .02).
・結論
観察研究であり異質性は高く限界はあるかもしれないが、制酸薬は再発性CD腸炎のリスクである可能性あり。
◯感想
study間の異質性はあるが、やはり制酸薬はCDIのリスクと言えそう。
特に入院中で抗菌薬使用をしている群ではその傾向があると思われる。
特に理由のない安易な制酸薬の使用は控えたほうば無難だろう
リアルワールドでのワーファリンはDOACに劣らない
最近話題のstudy。曲がりなりにも読んでみました。
community basedの後ろ向き研究
京都における心房細動の患者を検討
多施設研究(80施設)
3731人の経口抗凝固薬使用患者のデータをフォローしている。
ワーファリン、DOAC、非抗凝固でベースラインを比較。
リアルワールドでの現状を反映し、高齢者(73.6±11.0歳)、多くの合併症、高い平均CHADS2スコア(2.0±1.3)を有している。
DOAC群は最も若く(72.0±10.3歳)であり、 最も体重が重い(62.0±12.7kg;体格指数、23.9±3.9kg / m 2)。
平均CHADS2スコアおよびHAS-BLEDスコアは、 ワルファリン群で最も高かった(CHADS2スコア:2.3±1.3; HAS-BLEDスコア1.7±0.9)。
脳卒中の既往歴: ワルファリン群で最も高かった(24%)。 重大な出血の既往歴は群間で同様であった。 抗血小板薬の使用は、非OAC群(34%)において多かった。 ワルファリン群の平均PT-INRは1.83±0.47であった。
→ワーファリンはより高齢でより痩せておいて、CHADS2スコアおよびHAS-BLEDスコアも高く、脳卒中の既往例を持っている傾向がある
→ワーファリン群はよりhigh riskの傾向?
DOAC発売後DOACの使用は徐々に増加し2015年の地点で、ワーファリン37%、DOAC26%、非抗凝固36%
→なお抗凝固療法を行う割合自体がDOACの登場で増えている印象。
→DOACはCHADS2 scoreに関わらず処方されている
3年間のフォローでStroke/systemic embolismが224人、major bleedingが177人
Cox proportional hazards modelを使用したところ、DOACはワーファリンと比べたところ
stroke/SE events (HR, 0.95; 95% CI: 0.59–1.51, P=0.82)
major bleeding events(HR, 0.82; 95% CI: 0.50–1.36, P=0.45).
リアルワールドではDOACはワーファリンに比べて、stroke/SE eventおよび major bleedingにおいて特に違いがない
なお、ダビガトランの9割、リバロキサバンとアピキサバンの4割強は低容量処方。
さらに低容量処方のうちダビガトランの3~4割、リバロキサバンの5割とアピキサバンの6割が添付文章に従わない低容量処方
◯感想
実臨床でもINRが安定しているワーファリン内服患者は、安定して経過することが多い印象。
DOACの低容量処方は確かに臨床的な実感としても多い(アピキサバン5mg/dayなど)
本studyのPT-INRは1.83±0.47。高齢者ならINR1台後半で維持するという臨床的な感覚にも矛盾しない。
またワーファリンは高齢者やリスクが高い患者で処方されているにも関わらずDOACと変わりがないのならむしろ、ワーファリンのほうが安全性が高い??
最近、安易にDOACが処方される傾向に対して一石を投じる意味では意味のあるstudy。
ただ抗凝固療法に対する敷井を下げた意味ではDOACの功績はあるかもしれない。
INRが安定しない or INRのフォローが困難という状況以外ではまずワーファリンのほうがよいのかも。
経済的なことを考えれば、DOACもワーファリンもoutcomeに大きな違いがないなら、安価なワーファリンのほうが良さそう。
特に高齢者や低体重(CCr低下)であればワーファリンのほうが安全かも。
ただ今後の追試の結果も待つ必要はあるし、INRが安定しない、採血フォローが難しいという場合はDOACが良いかもしれない。
Case 12-2017: A 34-Year-Old Man with Nephropathy
以下ネタバレあり
34歳男性 聴力障害有り
11週前までは健康
倦怠感、寝汗、熱、食欲低下、悪心あり悪化傾向
咳と息のしづらさも徐々に出現 尿も泡立ち
体重も9kg減少
入院15日前に他院受診。
気分不良、嘔吐、胸痛が出現 胸痛は悪化傾向
バイタルは安定 発熱なし 呼吸状態安定
頸部リンパ節腫脹有り
両側呼吸音低下、ロンカイあり
腹部には圧痛あるが平坦、柔
L/Dは下記 BUN17 Cr1.6と腎機能障害
尿は泡立っている 比重1.037 尿のpH:5.0 尿潜血あり
尿蛋白は最低500mg/dl
心筋梗塞を疑う所見なし
沈渣 WBC10-25 high field RBC0-2 high field
CTではコンソリデーションを伴わない胸膜の肥厚
◯個人的な感想
・糸球体腎炎はありそう。それに伴いネフローゼになっているか。
さらに何らかの炎症も背景にありそう? 消耗している
では病因は??
・感染症
細菌:感染性心内膜炎はありえる。 Drug userではないか?
結核:非典型的だがなくはないか。。
ウイルス:HIVは常に考える。あとは肝炎ウイルスやEB,サイトメガロも??
・悪性腫瘍
悪性腫瘍ならリンパ腫を第1に考える。
・膠原病
小血管炎は考えられる。肺腎症候群として MPA? 欧米ではWegenerの頻度高い? Goodpastureも。
ただ、蛋白尿をきたすのが少し合わない?
SLEは蛋白尿も含めて考えるが、ただ消耗しすぎな印象も。
・その他
原発性の糸球体腎炎?? ただ全身症状をきたしすぎ
アミロイドーシスも鑑別か。
◯その後の経過
エコー輝度上昇、腹水 両腎の造影 腹腔内リンパ節腫大あり
Focal segmental glomerulosclerosis 巣状分節性糸球体硬化症は蛋白尿と腎不全をおこす
結局
HIV腎症は通常、CD4カウントが250以下にならないと出現しないが、稀に急性HIV感染でも出現する。消耗が激しいという臨床状況とも合致
臨床診断
→病理も巣状分節性糸球体硬化症でありHIV腎症に矛盾しない
最終診断
抗菌薬を必要としない急性咽頭痛へのステロイド
P:すぐに抗菌薬を必要としない急性咽頭痛
I デキサメタゾン10mgを単回投与
C プラセボ
O
・primary outdome
24時間の時点での咽頭痛の消失
・secondory outcome
48時間の時点での咽頭痛の消失
症状の持続
仕事や教育ができなかった期間
抗生剤の使用や他の薬剤の使用
副作用
英国の42の家庭医療の施設での多施設研究
フォローアップは28日間 576人がenroll
ブロック法でランダム化
double blind
抗菌薬は4割程度で後で使用している
グループ間の差はなさそう。
センター3点以上が14% 咽頭培養は合計 デキサメタゾン群で14.6%, プラセボ群で19%で陽性
関係ないがGroupA以外の菌も培養されている。
全員をフォローしているわけではないが、フォローアップは比較的されている
結果
デキサメタゾンを投与したほうが症状が消失している割合は高い傾向。
24時間の地点でoverall 22.6% vs 17.7% で有意差なし(P = .19)
48時間の地点ではoverrall (35.4%) vs (27.1%)( P = .03) とデキサメタゾンが優れている傾向
症状改善までの時間は有意差なし
その他のアウトカムも変わりなし
副作用
5つの重篤な副作用のうち2つがデキサメタゾン群。そのうちの1症例はトライアルに関係があるとされた。。
◯感想
確かに自覚症状に関してはデキサメタゾンが良い傾向があるかもしれない。
ただ信頼区間も広めであり、48時間の地点でかろうじて差が出た程度。
primary outcomeもhard outcomeではない。
このRCTだけでは明らかな副作用は増やさなさそうだが、深部膿瘍の合併症を増やす懸念が拭いきれない。。
年齢も平均30台と若いので高齢者には適応出来ない。
studyとしては興味深いがこのstudyだけで実臨床を変えるほどの結果にはならないだろう。。
桔梗湯が使えるし、無理にステロイドを使わなくてもよいかも。。
ACE-I or ARB 内服後の血清Cr上昇について
ACE-I or ARB開始後の血清Cr上昇についての心腎アウトカムについて調べた論文
population based cohort study
イギリスのプライマリ・ケアのデータを使用
患者: ARB or ACE-Iを開始した患者
アウトカム:血清Crが30%上昇した患者における末期腎疾患、心筋梗塞、心不全、死亡率。
122363人のうち2078人(1.7%)で血清Crが30%以上に増加。
特に高齢者、心腎の合併症、NSAIDS使用、ループ利尿薬、K保持性利尿薬の使用でその傾向がある
Crの30%以上の上昇した群におけるリスク比
末期腎疾患:3.43
心筋梗塞:1.46
心不全:1.37
死亡:1.87
Crがの上昇にしたがい死亡率が上昇している
他のoutcomeもCr上昇に従い増加傾向
特にCKDやHTがある際は末期腎疾患の発生に注意
◯結論
ARB or ACE-I開始後のCr上昇は心・腎の不良なアウトカムと関係している。
特にCrが30%以上増加した場合はその傾向が顕著。
◯感想
確かに外来でACE-I ,ARBを導入する際はCr上昇には気を使っているが、それは妥当なんだという感想。
個人的な印象ではACE-IでCr上昇が多い気もするけど、その比較は不明。。
いずれにせよ、ACE-I,ARB導入後は採血フォローをするのは妥当だと思われる。
Cr上昇を認めれば変更 or 中止を検討しても良い。
神経診察のフレーム 簡易version
元々のブログで書いていた神経診察のフレームを再掲します。
神経診察のフレームは下記のとおりです。
ここでは簡易versionを記載します。
個人的には、コアになる診察所見に絞って、それを何度も行うことが大切かと考えています。
①意識・高次脳機能
②脳神経系
③運動系
④感覚系
⑤腱反射・病的反射
⑥起立・歩行
⑦自律神経
上記7つのフレームで考えていきます
①意識・高次脳機能
JCSのチェックと病歴聴取時の違和感でスクリーニング。ほとんどの場合,病歴聴取の時点で「違和感がある」はず
さらに家族の言ういつもと違うという訴えを軽視しない!
異常があればMMSEを。
②脳神経系
半側空間無視の評価を(聴診器の真ん中を握れるか?)
瞳孔:瞳孔左右差 眼球運動障害 複視の有無 瞳孔の偏倚 眼振 対光反射
表情筋の左右差チェック:額に皺が寄せれるか(上を向かせたときについでにチェック)、目をギュッとつぶった時の左右差、口をイーとさせたときの左右差
顔面感覚の左右差:スクリーニングは上中下の3カ所を触って左右差を見る。
聴力:指を擦り合わせその音の左右差を聞く
構音障害:問題なく喋ってたらOK 通常病歴聴取の時点でおかしいはず
嚥下障害:水を飲めるかでテストする 病歴でもチェックを
舌の運動:下をまっすぐ出せるか 左右に振れるか
カーテン徴候:左右差がないか見ておく
③運動系
MMT…病歴上明らかな脱力があればそこを重点的に見る。病歴上脱力の訴えがなければ省いてもよい。
四肢失調…指鼻試験,手の回内回外運動、踵膝試験。
錐体路徴候…バレー徴候、Mingazzini、 Arm rolling、サイクリング試験(臥位で足をサイクリングさせるように動かす)
バレー徴候:感度92% 特異度90%
Can J Neurol Sci.2002 Nov;29(4):337-44.
Arm rolling :バレー徴候より感度が良好という報告がある(糸巻き巻きの動作を行い左右差を確認)
Neurology. 1993 Aug;43(8):1596-8.
*Finger rollingでも良い(指2本で糸巻き巻きをする。)
BCT(bed cycling test):感度:(64.3%) とMingazziniの感度46.2%よりも感度が良好。
錘体路徴候と四肢失調は非常に重要。
錘体路徴候が陽性なら上位運動ニューロンの問題。
バレー徴候は有用で特に小指が離れる、手の回内はより鋭敏。ただ手が下がるだけじゃない(臥位で行う場合は45度で両手を保持する)
なお四肢失調(いわゆる小脳症状)は錘体路に異常があっても出現する。四肢失調=小脳症状と早合点しない。
錘体路徴候として指鼻試験は異常になりうる。
スクリーニングとしては指鼻試験、回内回外試験、バレー徴候、Arm rolling
(Finger rolling)の4つが座りながらでも出来るので重宝する。
なお筋委縮は明らかな筋力低下があれば見ればいい。
筋トーヌスはパーキンソン症候群を疑えば(小刻み歩行、寡動 etc)確認する。
パーキンソンで見られる安静時震戦や、アルコール離脱時の振戦は高頻度に認める。
不随意運度ではミオクローヌスの頻度が高い。
*不随意運動は動画で記録して、専門科の評価を仰ぐのが最も確かな方法と思われる。
④腱反射・病的反射
深部腱反射…左右差,明らかな亢進に注目.出ないなら出ないでとりあえずOK .
腱反射は深追いしない。時間をかけすぎない。
ただし、明らかな腱反射の低下は役に立つ(末梢神経障害を示唆)。
バビンスキーは錘体路徴候として役に立つので見ておく。
⑤感覚系
アルコール綿による温痛覚の左右差を評価(アルコール綿の袋の角を使えば痛覚も評価可能)。
*特に歩行障害・めまいではアルコール綿での感覚低下は積極的に調べる(ワーレンベルグ症候群を示唆)。
音叉による振動覚低下も余裕があれば調べる(特に糖尿病性神経障害や歩行障害で後索障害の有無を見る時に)。
音叉は上下肢で振動が消えた時間を計測するが、ざっくりとは振動が消えた際に検者の尺骨茎状突起に当てて振動が残っているか確認する。
⑥起立歩行 (初心者では抜けが多い.必ず評価するように!)
まず立てるか?歩けるか? まっすぐに素早く歩いていれば大きな問題なし。
うまく歩けないならどんな歩行か?(小刻み歩行、wide base、分まわし歩行 etc)
→歩行に関しても動画を撮像して専門科に診てもらうのが最も確実。
片足立ち,けんけんができるか?(下肢筋力低下と体幹失調のスクリーニング)
継ぎ足歩行(体幹失調のスクリーニング。これが問題なく出来ればまず体幹失調はない)
かかと立ち,爪先立ち(下肢遠位筋評価と体幹失調の評価だが高齢者では厳しい)
Ronberg徴候(目を閉じても開いても関係なくふらついていれば小脳性)
*体幹失調は指鼻などの四肢失調の検査では検出できない。起立歩行の異常でしか検出できないため、起立歩行の評価は重要。特にワーレンベルグ症候群では四肢失調は出にくく、体幹失調が前面に出やすい。
⑦自律神経
病歴上の排尿困難、便秘、立ちくらみの有無でスクリーニングできる。
疑わしければ下記の3つを評価。
起立性低血圧
残尿評価(排尿後に自分でエコーを当てて膀胱径を測定)
排便障害(直腸診で肛門トーヌス低下を評価する)
他に心電図でRーR感覚の変動もチェック。
上記7つのフレームで考えるようにしています。
ここでは詳細は述べませんが、解剖学的にどこに異常があるか意識しながら診察をすると良いと思います。
持続性めまいならば、上記に加えHead impulse試験も行います(下記参照)
なお、病歴は基本的に感度が高いので、身体所見ではっきりしなくても、病歴で異常を訴えるのならば軽視すべきではありません(心因性反応は除く)
さらに病歴で疾患を想定しながら、身体診察をとるほうが効率がいいと思われます。
脊髄損傷と膀胱癌の関連
リハビリ病院におけるコホート研究
3670人のspinal cord injuryの患者を対象としている。
留置カテーテル、留置カテーテル未使用、 multi カテーテルに分けて検討
ICD使用は頚椎病変で多い。
留置カテーテル使用で明らかに膀胱癌が増加
留置カテーテルではRR4.9と相対リスク増加
maltiple catheterではそれほどではない。
留置カテーテルは膀胱癌のリスクと思われる。
では、どのタイプの膀胱癌が多いのか?
Bladder cancer in spinal cord injury patients. - PubMed - NCBI
脊髄損傷に関連した膀胱癌の特徴を検証した後ろ向きの研究
扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌の順番に多い
このstudyでは留置カテーテルはそれほど多くはない
→神経因性膀胱自体が膀胱癌のリスクである可能性あり。
さらに比較的進行している癌が多い。
カテーテルや感染などによって癌がよりagressiveになっている可能性あるとのこと。
あと、そもそもカテーテルが留置されていて常に膀胱が収縮しているため、膀胱癌がなくても膀胱壁は肥厚している傾向にあるため、診断が遅れるかもしれない。
つまり脊髄損傷の患者は膀胱癌のリスクが高いため、注意深くフォローし、膀胱鏡のリスクは低くすべき。