GIMブログ(あくえりの暢気にジェネラル)

JCHO東京城東病院総合診療科の森川暢によるブログです。総合内科と家庭医療が融合した、病院総合医の理想像を追い求めています。夢は、理想的な病院総合医のシステムの確立と普及です!今日の時代におけるGIMは、診断学や内科マネージメントに加えて、家庭医療学を専門にする必要があると考えています。このブログでは徒然なるままに思うところを書いていきます。

Case 6-2017: A 57-Year-Old Woman with Fatigue, Sweats, Weight Loss, Headache, and Skin Lesions

*以下ネタバレを含みます

57歳男性 倦怠感 寝汗 体重減少 頭痛 びまん性の腹痛 皮膚病変

24ヶ月前に乾性咳嗽が出現するまでは問題なかった

21ヶ月前に近医受診。咳嗽が継続し食欲低下、中等度の限局した腹痛もあった。体重も122.5⇒108.9kgへ PPIが処方された

徐々に倦怠感と筋肉痛が出現 踵に赤い斑点も出現 皮膚生検はPigmented Purpuric Dermatosisに矛盾しない 採血で好酸球が増加

20ヶ月前に継続する咳嗽で近医受診。胸部Xpは問題なし

単純CTではびまん性の気管支壁肥厚があり慢性炎症が疑われた

傍心臓、腸間膜、porta hepatis、後腹膜のリンパ節腫脹あり

19ヶ月前に上部消化管内視鏡⇒生検したが胃炎の所見

ヘリコバクター・ピロリの免疫染色は陰性

18ヶ月前にMRI撮像⇒門脈周囲のリンパ節腫脹

軽度の脾腫あるが他、明らかな異常なし 膵臓腫大なし

さらに造影CTも追加したら、中等度の気管支壁肥厚、腋窩リンパ節腫脹、 心外膜リンパ節、および 門脈、門脈周囲および腸間膜領域のリンパ節腫脹

 17ヶ月前に腋窩リンパ節生検⇒濾胞および傍皮質過形成と多形性の形質細胞増加を認めた HHV8は陰性 ⇒以上より反応性リンパ節腫脹の所見

体重は徐々に減少していった

 13ヶ月前にFDG-PET⇒腋窩、傍心臓、右内胸動脈付近のリンパ節に取り込み 肝臓と脾腫も取り込み増加

骨髄生検は反応性の細胞増加

肝臓の生検は門脈、傍門脈、小葉の炎症所見(形質細胞優位、たまに好酸球)、

胆管の増殖、限局性障害、リンパ球および散乱したアポトーシス性肝細胞
が見られ、類洞の線維化を認めた
⇒自己免疫性肝炎+限局性の硬化性胆管炎に矛盾しない

PSLを開始⇒中止  アザチオプリンも開始⇒倦怠感と腹痛は軽減

7ヶ月前にFDG-PET⇒脾腫、腋窩、右内胸動脈、後腹膜、腸骨および鼠径部のリンパ節腫脹。肺門リンパ節腫脹はなかった。気管支壁肥厚はあるが肺結節はない

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鼠径リンパ節腫脹⇒IgG4が陽性

4ヶ月前に改善しない咳、重度の疲労、体重減少、食欲不振、腹痛、吐き気、嘔吐、関節痛、びまん性の痛み、右ひざの腫れ、寝汗が出現

2ヶ月前に症状が悪化し両側の頭痛も出現

跛行もあり ドライアイ・ドライマウスなし

高血圧、貧血、左踵の痛みが継続。

2.5年前のツベルクリン反応は陰性

内服薬は、budesonide, azathioprine, omeprazole, metoclopramide,
and losartan

naproxenのアレルギーあり

he temperature was 35.1°C,the blood pressure 178/96 mm Hg, the pulse 114beats per minute, the respiratory rate 16 breaths
per minute, and the oxygen saturation 95% while
the patient was breathing ambient air.

The heightwas 165 cm, the weight 87.5 kg, BMI 32.1. 

 

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A:涙腺肥大 唾液腺も腫大

B:側頭動脈肥厚

C︰下腿の紫斑 palpable and nonpalpable

左下腹部痛有り 脾腫あり

左踵の痛みあり

右膝の滑膜肥厚

 

下記がL/D一覧

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○鑑別

GCA⇒側頭動脈の腫脹・頭痛からは疑う しかし皮疹や涙腺腫大など当てはまらない所見も多い

・サルコイドーシス⇒当てはまる所見は多いが、低補体血症などは認めないことが多く、そもそも生検で肉芽腫が証明されていない

・Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis⇒好酸球増多、咳、腹痛など当てはまることは多い。高ガンマグロブリン血症は非典型的で喘息や副鼻腔炎もない

・自己免疫性肝炎+Multicentric Castleman’s Disease⇒リンパ節生検の結果も矛盾しない。CRP高値、低補体血症も矛盾しない ただ他の多臓器の症状の説明ができない

・Clonal Immunoproliferative Disorders

リンパ腫も考えるが生検所見は合わない 形質細胞腫やmyelomaも考えるがmonoclonalな増殖ではない アミロイドーシスも一応念頭に

・シェーグレン症候群

キャッスルマン病にシェーグレンは合併しうる。涙腺・唾液腺の腫脹も合う。しかしドライアイやドライマウスがない

・クリオグロブリン血管炎

シェーグレンやリンパ腫に伴う血管炎は側頭動脈病変をきたしうる。皮疹や低補体血症もあっても良い。ただ、HIVHCVの感染はない

・IgG4関連疾患

組織学的にはキャッスルマン病との鑑別は難しいが最もありえる診断。ただ非典型的な症状もある。polyclonayなガンマグロブリン上昇、低補体血症、唾液腺・涙腺の腫脹、胆道病変、皮膚所見も説明できる。皮膚の浸潤、動脈・動脈周囲炎も説明できる。

関節炎と全身症状が強いことは矛盾する。

IgG4関連疾患でもIgG4が増加しないこともある

血清のIgG4が正常なのはprozone effectだろう

 

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側頭動脈生検⇒IgG4関連の血管炎に矛盾しない

 

 

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⇒皮疹の生検はIgG関連の中血管炎に矛盾しない

 

○診断

IgG4関連血管炎