GIMブログ(あくえりの暢気にジェネラル)

JCHO東京城東病院総合診療科の森川暢によるブログです。総合内科と家庭医療が融合した、病院総合医の理想像を追い求めています。夢は、理想的な病院総合医のシステムの確立と普及です!今日の時代におけるGIMは、診断学や内科マネージメントに加えて、家庭医療学を専門にする必要があると考えています。このブログでは徒然なるままに思うところを書いていきます。

左側憩室炎に対しては抗生剤治療は不要???

元々2012年に非複雑性の左側憩室炎に対して抗生剤を使わなくても合併症や再発が変わらないというRCTが発表された。

Randomized clinical trial of antibiotics in acute uncomplicated diverticulitis. - PubMed - NCBI

Br J Surg. 2012 Apr;99(4):532-9. doi: 10.1002/bjs.8688. Epub 2012 Jan 30.

 

P 左側憩室炎(非複雑性)

I 抗生剤使用

C 抗生剤不使用

O 合併症、再発、入院期間

多施設研究 合計623人を対象としたRCT

⇒結果アウトカムは両群で同等であった。

 

 

今回、同様に左側憩室炎に対して抗生剤を使用せずに様子を見たRCTが発表された為、読んでみた。

 

Randomized clinical trial of observational versus antibiotic treatment for a first episode of CT-proven uncomplicated acute diverticulitis. - PubMed - NCBI

Br J Surg. 2017 Jan;104(1):52-61. doi: 10.1002/bjs.10309. Epub 2016 Sep 30.

 

 

P CTで左側の非複雑性の急性憩室炎と診断された患者

 Hinchey stages 1a–b (膿瘍径5 cm未満)

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Ambrosetti CT criteria がmild

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Inclusion および Exclusionの一覧

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I  抗生剤群(amoxicillin–clavulanic acid) 合計10日 少なくとも最初の2日は点滴で その後内服にスイッチする。

C 経過観察群(外来治療の基準⇒通常の食事に忍容性があり、体温が38度以下、VAS score4未満,self-supportが出来る)

O primary outcome 6ヶ月の間の再発

secondory :再入院率、複雑性憩室炎(膿瘍、穿孔、閉塞/狭窄、憩室出血または瘻孔)、進行性憩室炎、憩室炎再発、重篤な有害事象、抗生物質治療の副作用、6ヶ月,12ヶ月の地点のS状結腸切除or 他の外科的/非外科的な介入、全死亡率

 

多施設の open labelのRCT

blindは出来ない 解析者のみblind

ブロック法でコンピューターを使ってランダム化

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ASA gradeが抗生剤群で少し高めだが概ねベースラインは同等

 

 

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ITT解析

 

非劣性試験 最低各々262人いれば良いとのこと。

Inaddition, the hazard ratio of recovery corresponding to a
non-inferiority margin of 5 days or less has been spelled
out here

 

結果

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primary outcomeは両群で特に変わりなし。 非劣性といえる。

 

 

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外来患者は経過観察群で多く、抗生剤の副作用は当然抗生剤使用群で多い。

有意差はないが、複雑性憩室炎や再入院率、S状結腸切除は抗生剤群で多いかも。。

 

 

○コメント

この結果だけを見ると軽症の左側憩室炎なら抗生剤を使用しなくてもよいかもしれない。

ただ、軽症の憩室炎であっても抗生剤なしで様子を見るのはかなり勇気がいる。

特に小さくても膿瘍形成していれば、なおさらそう。

実際、軽症の憩室炎なら外来で内服の抗生剤を使用すれば良いので、それくらいはリーズナブルな気がする。

今後メタアナリシスなどが出るまでは、なんとも言えないかも。

ただ、憩室炎であっても発症後ある程度時間が経っていて、抗生剤なしでも改善傾向の軽症のケースで、膿瘍形成も無ければ抗生剤無しで様子を見れるかもしれない。。