GIMブログ(あくえりの暢気にジェネラル)

JCHO東京城東病院総合診療科の森川暢によるブログです。総合内科と家庭医療が融合した、病院総合医の理想像を追い求めています。夢は、理想的な病院総合医のシステムの確立と普及です!今日の時代におけるGIMは、診断学や内科マネージメントに加えて、家庭医療学を専門にする必要があると考えています。このブログでは徒然なるままに思うところを書いていきます。

巨細胞性動脈炎 mimic の感染性心内膜炎

高齢男性。

新規発症の両側頭部痛。炎症反応上昇。霧視。

跛行や側頭動脈の身体所見・エコー所見は乏しく、造影CTで大動脈炎の所見はなし。

 

ただ臨床的に巨細胞性動脈炎否定できず、専門科に転院。

そちらで眼底検査するも虚血性視神経症の所見なし。やはり側頭動脈のエコー所見も乏しく非典型的。

後日、当院および他院の血培からStaphylococcusが全セットで陽性。CNS。

感染性心内膜炎が疑わわしい。

 

GCA mimicのIEがあるか調べてみた。

 

そもそも、GCA視覚障害をきたすために出来るだけ早く診断して治療しないと視覚障害を残す。

高齢者の頭痛の鑑別で重要だが、緊張性頭痛likeの非典型例もあり診断が遅れてしまい、視力障害をきたす例もある。 J Neurosci Rural Pract. 2014 Oct-Dec; 5(4): 409–411.

Giant cell arteritis or tension-type headache?: A differential diagnostic dilemma

 

 

 リウマチ性多発筋痛症の鑑別疾患として常に感染性心内膜炎があがる。

全身の筋肉痛・肩・骨盤の痛み、ESR上昇でPMRと暫定診断されステロイドを開始し、後日IEであると判明した症例報告もある

Infective Endocarditis Presenting as Polymyalgia Rheumatica: Case Report | 2011, Volume 26, Issue 2 | Archives of Rheumatology

 

 

また実際にGCAのような症状を呈した感染性心内膜炎の報告もある。

Subacute bacterial endocarditis presenting as polymyalgia rheumatica or giant cell arteritis

Clin Exp Rheumatol. 2006 Mar-Apr;24(2 Suppl 41):S38-40.

3人のレンサ球菌による亜急性感染性心内膜炎によって、2人がGCAのような症状。1人がPMRのような症状を認めた。

GCAlikeの症状として頭皮の圧痛、顎の痛み、視覚症状を認めた。発熱がない患者もいた。3人のうち2人が実際にステロイドで治療された。

これらの症状は感染性心内膜炎の治療で全て消失した。

ということでGCAを考えれば必ずIEを考える必要がある。

 

 

なお、ややこしいことにGCAによってIEのようなvegutationをきたすという報告もあり。

Echocardiographic findings in patients with temporal arteritis: apropos of one case of temporal arteritis-associated verrucous (Libman-Sachs) endocarditis

Clin Exp Rheumatol. 2006 Mar-Apr;24(2 Suppl 41):S35-7.

 心エコーのなんらかの異常は25人のGCAのうち13人(52%)で認められ、これは健常者(12.5%)より明らかに比率が高いと。

 

 

 

なので、やはり血液培養がGCAやPMRの診断にはとても有用という基本が大切ということですね。。