GIMブログ(あくえりの暢気にジェネラル)

JCHO東京城東病院総合診療科の森川暢によるブログです。総合内科と家庭医療が融合した、病院総合医の理想像を追い求めています。夢は、理想的な病院総合医のシステムの確立と普及です!今日の時代におけるGIMは、診断学や内科マネージメントに加えて、家庭医療学を専門にする必要があると考えています。このブログでは徒然なるままに思うところを書いていきます。

誘引のない静脈血栓症に対するアスピリンの効果

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1114238#t=article

Aspirin for Preventing the Recurrence of Venous Thromboembolism

n engl j med 366;21 nejm.org may 24, 2012

今更ですが、有名な論文なので読んでみました。

 

P 誘引のない静脈血栓塞栓(近位のDVT and/ or 肺塞栓)をはじめて発症し6~18ヶ月のワーファリンを投薬した18歳以上の患者

 

Exclusion

抗リン脂質抗体など明らかな凝固異常がある

活動性悪性腫瘍

静脈血栓症の一時的な危険因子がある

抗凝固中の静脈血栓症の再発

アスピリンアレルギー

他に、長期抗凝固療法の適応疾患が併存

NSAIDSの使用

平均寿命6ヶ月未満

12ヶ月以内の消化性潰瘍

 

I アスピリン100mg/day

C プラセボ

O primary outcome:静脈血栓塞栓(DVTと肺塞栓の複合エンドポイント)の再発 sefety endpoint: major bleeding

多施設のRCT double blind

検出力80%で合計400人の患者が必要→数は概ね足りている

 

ランダム化した結果、両群のベースラインに違いなし

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→ITT解析 フォローアップは適切



結 果

 

・静脈血栓塞栓の再発

アスピリン群 205 例中 28 例  (年 6.6% )

プラセボ群 197 例中 43 例であった (年 11.2% )

ハザード比 0.58,95%信頼区間 [CI] 0.36~0.93 p=0.02

 

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出血や死亡は両群で変わりなかった

5人の患者でstudy drugによる副作用で中止になっている。うち3人は胃痛だが2人はプラセボで1人はアスピリン

 

◯感想

比較的たしかなデザインのstudy。

誘引のない静脈血栓症で抗凝固療法を6-18ヶ月行った患者の2次予防としてアスピリンは有用な印象。

ただ、癌や明らかな凝固異常、明らかな出血エピソードがある患者は除外。

 

Up to Dateによると通常誘引のない近位DVT or 肺塞栓で出血リスクが低い場合初発は、永続的な抗凝固療法をsuggest、再発している場合は永続的な抗凝固療法をrecommendであり、抗凝固療法がなんらかの理由で使えない場合はアスピリンを考慮してもよいとされている。

実際に、抗凝固療法に比べ出血は少ないかもしれないが、静脈血栓症の予防効果は低いと思われる。

使うとすれば、初発の誘引のない静脈血栓症で積極的な治療を望まず、フォローも難しい場合には考慮しても良い??