GIMブログ(あくえりの暢気にジェネラル)

JCHO東京城東病院総合診療科の森川暢によるブログです。総合内科と家庭医療が融合した、病院総合医の理想像を追い求めています。夢は、理想的な病院総合医のシステムの確立と普及です!今日の時代におけるGIMは、診断学や内科マネージメントに加えて、家庭医療学を専門にする必要があると考えています。このブログでは徒然なるままに思うところを書いていきます。

静脈血栓症の追加治療に関するリバロキサバンとアスピリンの比較

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1700518

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P 静脈血栓症で6-12ヶ月の抗凝固療法(ワーファリン or DOAC)を終了しその後も追加治療が必要な18歳以上の患者

Ccr30未満、肝障害で凝固異常があれば除外

I リバロキサバン20mg/day  、10mg/day 

C アスピリン100mg/day 

O  静脈血栓症の再発(知識的 or 非致死的)、major bleeding

RCT 多施設で double- blind ただバイエル社からの資金提供あり

ランダム化はinteractive voiceresponse systemでブロック法使用

プラセボを使用している。

優越性試験で90%の検出力で3300人必要⇒数は足りている
アウトカムは別に割り付けをしらないグループで評価

 

ベースラインは各群で同等

平均年齢は55歳前後

7割が70kg以上ので3割は90kg以上の巨漢

誘因がはっきりしている静脈血栓が6割弱存在する

静脈血栓症の既往が有るのは2割弱

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⇒6割の患者で12ヶ月継続している。 2割弱が6ヶ月継続のみ

 

合計3365人をITT解析 フォローアップは出来ている

 

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結果

結局12ヶ月、上記内服薬を投与。

◯プライマリーアウトカム

リバロキサバン20mg   17 of 1107 (1.5%) 

リバロキサバン10mg  13 of 1127  (1.2%)

アスピリン100mg   50 of 1131 (4.4%)

と有意差をもってリバロキサバン群が少ない( P<0.001 for both comparisons)

 

アスピリン100mgに対してリバロキサバン10mg NNT23

アスピリン100mgに対してリバロキサバン  20mg    NNT31

 

hazard ratio for 20 mg of rivaroxaban vs. aspirin, 0.34; 95% confidence
interval [CI], 0.20 to 0.59;

hazard ratio for 10 mg of rivaroxaban vs. aspirin,
0.26; 95% CI, 0.14 to 0.47.

 

◯major bleeding

リバロキサバン20mg   0.5%

リバロキサバン10mg 0.4%

アスピリン100mg.3% 

 

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有害事象は3群で変わりなし

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◯感想

比較的デザインがしっかりしたstudyではある。

ただ、バイエル社からの資金提供があることには注意が必要

確かに、リバロキサバンによる抗凝固療法はアスピリンに比べて静脈血栓症の再発は少ないのかもしれない。

平均年齢は55歳前後で、誘因がはっきりしている静脈血栓が6割弱、静脈血栓症の既往が有るのは2割弱で肥満のグループなので、普段自分たちが診ることが多い高齢者にはそのまま適応出来ないかもしれない。

特にリバロキサバンによる出血の評価はこのstudyだけでは困難かもしれない(実際にメタアナリシスではリバロキサバンの出血リスクは高い。。)

なお、誘因が明らかな静脈血栓症でも再発が意外に多い印象。

 

比較的若年で、体重も重めで、静脈血栓症のリスクが高い場合は少なくとも抗凝固療法を6ヶ月で終了せずに延長したほうが良いのかもしれないが、出血リスクとの兼ね合いにはなる。。