GIMブログ(あくえりの暢気にジェネラル)

JCHO東京城東病院総合診療科の森川暢によるブログです。総合内科と家庭医療が融合した、病院総合医の理想像を追い求めています。夢は、理想的な病院総合医のシステムの確立と普及です!今日の時代におけるGIMは、診断学や内科マネージメントに加えて、家庭医療学を専門にする必要があると考えています。このブログでは徒然なるままに思うところを書いていきます。

病院総合医による「総合内科病棟システム」

病院総合医と呼ばれる医師も、内科系の医師と家庭医療系(新専門医制度では総合診療専門医)の医師が混在しているのが日本の現状だと思います。

どちらのキャリアパスでもよいと思いますが、前者は内科に関しては深く診療できますが、後者のほうがより広い視点をもっているので、お勧めのキャリアパスです(個人的にも在宅・診療所や小児科の経験が無いことが負い目になっています。)

しかし、実際問題として潜在的に最もニーズがある分野は専門内科に将来進む医師に対して、幅広い視点の内科教育を行うという点だと考えています。

内科の各科をローテートをするのではなく、最低1年間は総合内科と専門内科がコラボをして全ての内科疾患を同時並行に診療するという「総合内科病棟システム」を構築することが必要なのではと考えています。

米国の内科病棟教育のようなイメージです。

そして、昨今はじまろうとしている内科専門医制度におけるJ-OSLERを用いた後期研修医教育は、この「総合内科病棟システム」にマッチするのではないかと考えています。

「総合内科病棟システム」は後期研修医にとって潜在的なニーズがかなりある分野で、実際にそれを実践できている病院が少数である点から、いわゆるブルーオーシャンになりうると考えます。

しかし、主に4つ課題があると思います。

1つ目は病院経営に対する貢献です。このようなシステムが後期研修医を集めるのに効果的だとしても、病院経営に対してマイナスに働くとすれば砂上の楼閣になるだけかと考えます。

2つ目は専門内科に対する貢献です。つまりこのシステムがあることで、専門内科と総合内科がお互いにwin-winの関係になる必要があるのだと思います。先日の勉強会では、総合診療センターを設立し、そのなかに総合内科だけではなく専門内科も入ってもらう案も出ていました。とはいえ、専門内科の先生方にはご自身の専門分野に集中して頂くような体制も必要だと思います。

3つ目は病院のトップの理解です。このシステムを作ることが病院のミッションとして重要であるというトップの強い意思が必要になると考えます。

4つ目はマンパワーの問題です。「総合内科病棟システム」を維持するためには、マンパワーが必要ですが、新内科専門医制度では1年間基幹病院外の勤務が義務付けられています。ここを補うためには診療看護師の活用がカギになるのではと考えています。

病院経営者の観点で考えても、「幅広く診療ができる内科医」というのが最も分かりやすく、実際に必要とされているニーズなのではと感じます。

総合診療医を増やす活動をしつつも、当面は最も病院側にも研修医にもニーズがある「内科」という分野でどのように存在感を示せるかが今後の課題だと考えています。

個人的には中~大規模病院で、このようなシステムを作ることが出来ればひとつのロールモデルになりうるのではと考えています。