GIMブログ(あくえりの暢気にジェネラル)

JCHO東京城東病院総合診療科の森川暢によるブログです。総合内科と家庭医療が融合した、病院総合医の理想像を追い求めています。夢は、理想的な病院総合医のシステムの確立と普及です!今日の時代におけるGIMは、診断学や内科マネージメントに加えて、家庭医療学を専門にする必要があると考えています。このブログでは徒然なるままに思うところを書いていきます。

レニン・アンギオテンシン系阻害薬の心不全のない安定狭心症への効果 systematic review+meta analysis

http://www.bmj.com/content/bmj/356/bmj.j4.full.pdf

Renin angiotensin system inhibitors for patients with stable
coronary artery disease without heart failure: systematic review
and meta-analysis of randomized trials

 

P 心不全がない安定型狭心症の患者(EF40%以上、臨床的に心不全を認めない)

I レニンアンギオテンシン系阻害薬(ACE-I or ARB

C プラセボ or  他の降圧薬によるactive control(ほぼCCB)

O

primary outcome 全死亡、心血管死、心筋梗塞脳卒中狭心症心不全

secondory outome  血行再建術、予期せぬ糖尿病、副作用による中止

 

少なくとも100人を1年以上追跡したstudyを集めている。

RCTのメタアナリシスでACE-IとARBの比較は除く

データベース:PubMed, Cochrane Central Register ofControlled Trials (CENTRAL), and EMBASE 

あらゆる言語で検索している

RCTの質はコクランの基準に従い、割り付けやブラインドなどをチェックしている

3人の評価者が独自に評価している

fixed effect model と random effects modelを用いてメタアナリシス

I2 検定で異質性を評価

 

○結果

・全死亡に関してはレニン・アンギオテンシン系はプラセボよりも優れるが、他の降圧薬とくらべても変わりなし 異質性は高い傾向

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レニンアンギオテンシン系の全死亡に関する効果の発現は、control event rateが 高頻度であってはじめて認める

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・心血管死亡に関してもレニン・アンギオテンシン系はプラセボよりも優れるが、他の降圧薬とくらべても変わりなし 異質性は高い傾向

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レニンアンギオテンシン系の心血管死亡に関する効果の発現は、control event rateが 高頻度であってはじめて認める

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心筋梗塞に関してもレニン・アンギオテンシン系はプラセボよりも優れるが、他の降圧薬とくらべても変わりなし 異質性は高い傾向

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脳梗塞狭心症心不全もも同様にプレセボとの比較でのみ効果がある

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ちなにみ薬剤の中止はACE-Iで多い。

there was a significant increase in the risk of drug withdrawal due to adverse
effects with angiotensin converting enzyme inhibitors
(1.57, 1.25 to 1.99) but not with angiotensin receptor
blockers (0.66, 0.34 to 1.28; Pinteraction<0.001; fig S8; table
S4). There was high statistical heterogeneity in the analysis
(fig S8).

 

ただActive controlはCCBを用いていることが多いので他の降圧薬にも適応できないことに注意が必要

 

○感想

 確かに心不全やDM、CKDもない安定している狭心症なら、無理にレニン・アンギオテンシン系の阻害薬を使わなくてもCCBを使っても良いかもしれない。

心血管死亡のリスクが低い場合は特にそう言えるかもしれない。

ただ、ACE-IとARBは違う薬だと思うので、ACE-Iに絞った場合にどうなるかは気になるところ。。

外来で見ているような喫煙者+脂質異常症があり狭心症もあるというような患者なら、やっぱりACE-Iを使いたい気はするが。。(心血管死のリスクも高い)