GIMブログ(あくえりの暢気にジェネラル)

JCHO東京城東病院総合診療科の森川暢によるブログです。総合内科と家庭医療が融合した、病院総合医の理想像を追い求めています。夢は、理想的な病院総合医のシステムの確立と普及です!今日の時代におけるGIMは、診断学や内科マネージメントに加えて、家庭医療学を専門にする必要があると考えています。このブログでは徒然なるままに思うところを書いていきます。

総合診療専門医が1階にあるべきである理由

とある先生にメールした内容ですが、ブログで共有しようと思います。

総合診療専門医が内科と同様に、1階にあるべき理由になります。

 

確かに僕の周りの総合内科医/ホスピタリストでも、総合診療専門医が1階建てにあるのは、おかしいという意見をよく耳にします。個人的には気持ちはよく分かります。内科を、ちゃんとやることの難しさは実感していますし、いまでも自分が内科を広く深く診れている自信はありません。総合内科として5年間働き続けてもこのありさまですので、総合診療専門医として後期研修の3年間の間に内科以外もいろいろ、つまみ食いしているだけで内科の基礎が身につくのかという疑問は当然湧いてくると思います。
しかし、一方で個人的な結論としては、総合診療専門医が1階にあること自体には僕は賛成しています。それは、プライマリ・ケア連合学会で4年間、家庭医の先生方と仕事をしてきた経験が大きいと思います。また同期の病院で働く家庭医を見てきた影響も大きいと思います。優秀な家庭医のbiomedicalだけでなく社会、精神など全人的に患者を診るための理論・能力を目の当りにすると自分に欠けているのはこういうところなのだと医師6年目の際に実感できました。自分が家庭医療の理論を勉強したいので、雑誌の編集も名乗りを上げたりしました。

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医師としての基礎をどこに置くべきかという問題はありますが、家庭医療的な思考は根本的な医師のOSに関わるので、後で再度ダウンロードし直すのは相当に困難です。私は、たまたま幸運に恵まれてOSをダウンロードし直しましたが、しかし家庭医の先生ほどに全人的に患者を診ることは出来ないなと感じています。一方、ホスピタリストに必要な診断学や内科マネージメントは、幅広く3年間総合診療研修をした後に改めて総合内科として働くことで伸ばすことは比較的容易に感じます。実際に家庭医療専門医を持っているホスピタリストは非常にバランスが取れている印象です。biomedicalに関して極めた達人もいますが、皆が彼らのようになれるわけではないことを考えれば、僕は総合診療研修を先にするほうがバランスが取れた人材が増える可能性が高いと考えています。また、総合内科として内科の後期研修を終わった医師が、消化器内科などの専門家に進むことが多いことも問題だと思っています。家庭医療研修を終わった人材はかなりの確率でそのまま総合診療を続けることとは対照的です(ちなみに、家庭医療専門医の50%は病院で働いています)
開業するための資格として総合診療研修があるべきだという意見もありますが、別に考えたほうが良い気がします。本当はそののようなシステムが望ましいと考えますが、まずは総合診療を志す研修医をどう育てるかが重要かと考えます。以上の理由で、総合診療専門医が1階立てにあるほうが望ましいと考えています。むしろ、2階建てに病院総合診療専門医という資格を作るべきだと僕は考えています。病院総合診療専門医は、内科専門医からも総合診療専門医からも行くことが出来る資格であるべきだと思います。そのかわりに、内科専門医の先生方は家庭医療的な研修を集中的に行い、総合診療専門医の先生方は内科的な研修を集中的に行うことでバランスが取れると考えています。