脊髄損傷と膀胱癌の関連
リハビリ病院におけるコホート研究
3670人のspinal cord injuryの患者を対象としている。
留置カテーテル、留置カテーテル未使用、 multi カテーテルに分けて検討
ICD使用は頚椎病変で多い。
留置カテーテル使用で明らかに膀胱癌が増加
留置カテーテルではRR4.9と相対リスク増加
maltiple catheterではそれほどではない。
留置カテーテルは膀胱癌のリスクと思われる。
では、どのタイプの膀胱癌が多いのか?
Bladder cancer in spinal cord injury patients. - PubMed - NCBI
脊髄損傷に関連した膀胱癌の特徴を検証した後ろ向きの研究
扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌の順番に多い
このstudyでは留置カテーテルはそれほど多くはない
→神経因性膀胱自体が膀胱癌のリスクである可能性あり。
さらに比較的進行している癌が多い。
カテーテルや感染などによって癌がよりagressiveになっている可能性あるとのこと。
あと、そもそもカテーテルが留置されていて常に膀胱が収縮しているため、膀胱癌がなくても膀胱壁は肥厚している傾向にあるため、診断が遅れるかもしれない。
つまり脊髄損傷の患者は膀胱癌のリスクが高いため、注意深くフォローし、膀胱鏡のリスクは低くすべき。
PMRと悪性腫瘍の関係
悪性腫瘍の合併と言えばRS3PEが有名ですが、PMRに悪性腫瘍は合併するか?
イギリスのコホート研究。
以前に癌や血管病変を指摘されていないPMRでコルチコステロイドで治療された患者を対象としている。最初に癌と診断、死亡、データベースに記録されなくなるまでフォローした結果
ベースラインは両群で同等
7.8年のフォローで、PMRでは23.2%,non-PMRでは19.5%の癌が発生している。
PMRと診断後最初の6ヶ月にPMRはnon -PMRに比べて調整したHRは1.69と、PMRで癌の発生が高い傾向
消化器、皮膚、前立腺、肺、乳癌、生殖器、血液、リンパ腫、泌尿器、神経、その他などが原因となりうる。
前立腺癌とリンパ腫の割合はPMRで高いかもしれない
PMRと診断をした or PMRのような症状を見たときも慎重に癌のr/oを行うべきと言える。
造影剤腎症 生理食塩水予防効果 RCT
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)30057-0/abstract
Prophylactic hydration to protect renal function from intravascular iodinated contrast material in patients at high risk of contrast-induced nephropathy (AMACING): a prospective, randomised, phase 3, controlled, open-label, non-inferiority trial
P eGFR:45〜59 mL /分/1.72m² (糖尿病 or >75歳、貧血
●結果
造影剤腎症発症は両群で変わりなし。
心不全は明らかに生理食塩水群で多い
コストも生理食塩水群で高い
●結論
今回のinclusionに当てはまるような待機的造影CTで、腎機能障害が比較的軽度であれば、生理食塩水の予防は必ずしも必要ないかもしれない。
PMRにおけるエコー所見について
先日、PMRで綺麗なエコー所見を認めた方がいました。
PMRは滑液包炎が前面に出る病態でエコーでもそれを反映するようです。
PMRのスコアリングとしては2012年の下記の論文が有名です。
上記のように臨床所見が重要視されていますが、エコー所見も重要視されています。
Polymyalgia Rheumatica - Physiopedia, universal access to physiotherapy knowledge.
今回、上腕二頭筋健の所見が綺麗に見えました。
力こぶを作るようにした時に、上腕二頭筋腱に負荷がかかります。
ちょうど、下記図の赤いところです。
ここにエコーを当てると下記上図a のようなエコー画像が綺麗に見えました。
健周囲にfluid貯留が見えます。。
他には三角筋下の滑液包炎もエコーで上図bのように見えるようです。
ひとまず、上腕二頭筋健のエコーはとても簡単なので、PMRを疑えばひとまず行うのは良いと思いました。
腸腰筋の石灰化
圧迫骨折+心不全で入院。
なぜか腸腰筋が石灰化している。
psoas abscess Calcification で検索。
意外にも腸球菌による腸腰筋膿瘍でも石灰化を生じうる
Calcified iliopsoas abscess caused by Enterococcus faecalis. - PubMed - NCBI
ただ、やはり結核がヒットする。こちらは予想通り。
[Calcified tuberculous abscess of the psoas muscle. Apropos of a case]. - PubMed - NCBI
Psoas muscle calcification で検索してみる
Myositis ossificans in psoas muscle after lumbar spine fracture. - PubMed - NCBI
骨化性筋炎も原因となりうるとのこと。
L3の圧迫骨折に続発して発症したとのこと。
最初は血腫? 後に石灰化が明らかに。
CTガイドでの生検したら、新たな骨形成、骨格筋線維の萎縮および線維化。リンパ球の浸潤 。不規則な骨梁と線維芽細胞増殖が認められた。
2カ月後のフォローアップMRIおよびCTスキャンでは、以前の石灰化した腫瘤は認めなかった。
片側性の仙腸関節炎
若年男性の片側性仙腸関節炎 鑑別は??
片側性なら普通は感染症を考える。
ただ、国内発症は極めて稀。
獣医の業界で話題になっている。
http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0903_03.pdf
ブルセラ症のsystematic review(というかこんなのあるのね。)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3516581/pdf/pntd.0001929.pdf
やはり、日本では極めて稀
ブルセラ症自体が多彩な症状をきたす。関節炎は必須ではない
ブルセラ性の関節炎のレビュー
症状としては発熱はほぼ認める。ただ腰痛は6割ほど。
筋肉痛や頭痛、食欲不振など全身症状も認める
診断にはELISAが有用 血培は長期間の培養が必要 感度は高くない
罹患関節は仙腸関節、膝、股関節で多い
では感染性仙腸関節患者で多い原因は?
感染性仙腸関節炎患者21人を解析した中国からの報告(原文は中国語。。)
男性が9人、女性が13人。
(85.7%)の患者は片側性の仙腸関節炎。
8人(38%)が結核性(TSI)
3人(14%)がブルセラ(BSI)
非ブルセラ・非結核性仙腸関節炎ではCRPやESRが著増したと。
6人のISI、2人のBSI、および4人のTSIを含む12人の患者が病理学的に診断された。
おそらく、化膿性の仙腸関節炎のことと思われる。。
化膿性仙腸関節炎の報告は、2007年の日本からの報告によると化膿性仙腸関節炎 は 145例(小児 81例)の文献報告がされており、稀な疾患。
http://www.jspid.jp/journal/full/01902/019020175.pdf
さらに多彩な症状をきたしうるため、診断が難しいと。
感染経路は、皮膚・血流感染・打撲などの外傷があげられる。
腹膜刺激徴候を有する強い腹痛を伴うこともある。
起因菌としてはブドウ球菌が最多。
Pregnancy-Associated Pyogenic Sacroiliitis: Case Report and Review
妊娠関連の化膿性仙腸関節炎レビュー。
平均年齢は25.4歳。
妊娠とや産褥、流産後との関連がある。
リスク因子として、injection drug、感染性心内膜炎、尿路感染、子宮内膜炎など。
●臨床的な特徴
大部分の症例(66.7%)は、急性発症(<7日間)
潜伏期間は、2〜32日。
局所の痛み:100%
仙腸関節の圧痛:80%
歩行困難:47%
33.3%で発熱がなかった。
なお、血培の陽性率は40%、関節液の培養陽性率は75%とされている。
診断にはMRIが有用
仙腸関節の炎症が仙骨や腸腰筋など周囲の組織へ波及しうるため、多彩な症状を呈すると考えられている。
なお、化膿性仙腸関節炎は30歳未満が全体の80%を占める。
これは仙腸関節の可動性および血管新生が同年代でピークだからであると考えられている。
下記の報告のように坐骨神経痛と誤診されることもある。
Postpartum septic sacroiliitis misdiagnosed as sciatic neuropathy. - PubMed - NCBI
60歳以上は全体の3%のみという報告もある。
http://www.semarthritisrheumatism.com/article/S0049-0172(96)80010-2/abstract
ということで。。。
片側性仙腸関節炎をみたら、感染症を考える。
化膿性と結核、ブルセラを考えるが、ブルセラは少ない。
化膿性仙腸関節炎は若年者に多く、坐骨神経痛と誤診されうる。
巨細胞性動脈炎 mimic の感染性心内膜炎
高齢男性。
新規発症の両側頭部痛。炎症反応上昇。霧視。
顎跛行や側頭動脈の身体所見・エコー所見は乏しく、造影CTで大動脈炎の所見はなし。
ただ臨床的に巨細胞性動脈炎否定できず、専門科に転院。
そちらで眼底検査するも虚血性視神経症の所見なし。やはり側頭動脈のエコー所見も乏しく非典型的。
後日、当院および他院の血培からStaphylococcusが全セットで陽性。CNS。
感染性心内膜炎が疑わわしい。
そもそも、GCAは視覚障害をきたすために出来るだけ早く診断して治療しないと視覚障害を残す。
高齢者の頭痛の鑑別で重要だが、緊張性頭痛likeの非典型例もあり診断が遅れてしまい、視力障害をきたす例もある。 J Neurosci Rural Pract. 2014 Oct-Dec; 5(4): 409–411.
Giant cell arteritis or tension-type headache?: A differential diagnostic dilemma
リウマチ性多発筋痛症の鑑別疾患として常に感染性心内膜炎があがる。
全身の筋肉痛・肩・骨盤の痛み、ESR上昇でPMRと暫定診断されステロイドを開始し、後日IEであると判明した症例報告もある
また実際にGCAのような症状を呈した感染性心内膜炎の報告もある。
Subacute bacterial endocarditis presenting as polymyalgia rheumatica or giant cell arteritis
Clin Exp Rheumatol. 2006 Mar-Apr;24(2 Suppl 41):S38-40.
3人のレンサ球菌による亜急性感染性心内膜炎によって、2人がGCAのような症状。1人がPMRのような症状を認めた。
GCAlikeの症状として頭皮の圧痛、顎の痛み、視覚症状を認めた。発熱がない患者もいた。3人のうち2人が実際にステロイドで治療された。
これらの症状は感染性心内膜炎の治療で全て消失した。
なお、ややこしいことにGCAによってIEのようなvegutationをきたすという報告もあり。
Clin Exp Rheumatol. 2006 Mar-Apr;24(2 Suppl 41):S35-7.
心エコーのなんらかの異常は25人のGCAのうち13人(52%)で認められ、これは健常者(12.5%)より明らかに比率が高いと。
なので、やはり血液培養がGCAやPMRの診断にはとても有用という基本が大切ということですね。。