アクティブな通勤、特に自転車通勤は心血管リスク、癌のリスクを低減する
P イギリス在住の成人
I アクティブな通勤(自転車、歩行、それらの混合)
C アクティブでない通勤(車、交通公共機関)
O 心血管疾患、癌、死亡率(心血管死、癌死、全死亡)
前向きのpopulation based study
263540人の参加者
52%は女性;平均年齢は52.6歳
BMI>25が6割超
心血管疾患を持っているのが2割弱
元々のベースラインに大きな違いはない
結果
全死亡率、心血管疾患、心血管死、癌死、癌の発生率はいずれも自転車通勤群で低い傾向。
心血管疾患、心血管死は歩行通勤群で低い傾向だが、癌に関しては差はなさそう。
なお、Mixed mode(公共交通機関や車での通勤を併用する群)でも多少は良い傾向があるが、アクティブな通勤単独群ほどの効果はなさそう
全体的に歩行距離が長いほうがアウトカムは良さそう
自転車も同様で通勤距離が長いほうがアウトカムは良さそう
◯まとめ
自転車通勤、特に長い距離の通勤は心血管疾患、癌の罹患率を低下させ、死亡率を低下させる可能性あり。
歩行通勤も心血管疾患および心血管死亡率を低下させうる。
車での通勤よりも歩行、出来れば自転車での通勤を、特に肥満の患者には勧めても良いのかもしれない。
電車や車を使うにしても、少なくとも歩く距離を長めにするような指導はしても良いかもしれない。
静脈血栓症の追加治療に関するリバロキサバンとアスピリンの比較
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1700518
P 静脈血栓症で6-12ヶ月の抗凝固療法(ワーファリン or DOAC)を終了しその後も追加治療が必要な18歳以上の患者
Ccr30未満、肝障害で凝固異常があれば除外
I リバロキサバン20mg/day 、10mg/day
C アスピリン100mg/day
O 静脈血栓症の再発(知識的 or 非致死的)、major bleeding
RCT 多施設で double- blind ただバイエル社からの資金提供あり
ランダム化はinteractive voiceresponse systemでブロック法使用
プラセボを使用している。
優越性試験で90%の検出力で3300人必要⇒数は足りている
アウトカムは別に割り付けをしらないグループで評価
ベースラインは各群で同等
平均年齢は55歳前後
7割が70kg以上ので3割は90kg以上の巨漢
誘因がはっきりしている静脈血栓が6割弱存在する
静脈血栓症の既往が有るのは2割弱
⇒6割の患者で12ヶ月継続している。 2割弱が6ヶ月継続のみ
合計3365人をITT解析 フォローアップは出来ている
結果
結局12ヶ月、上記内服薬を投与。
◯プライマリーアウトカム
リバロキサバン20mg 17 of 1107 (1.5%)
リバロキサバン10mg 13 of 1127 (1.2%)
アスピリン100mg 50 of 1131 (4.4%)
と有意差をもってリバロキサバン群が少ない( P<0.001 for both comparisons)
⇒アスピリン100mgに対してリバロキサバン10mg NNT23
⇒アスピリン100mgに対してリバロキサバン 20mg NNT31
hazard ratio for 20 mg of rivaroxaban vs. aspirin, 0.34; 95% confidence
interval [CI], 0.20 to 0.59;
hazard ratio for 10 mg of rivaroxaban vs. aspirin,
0.26; 95% CI, 0.14 to 0.47.
◯major bleeding
リバロキサバン20mg 0.5%
リバロキサバン10mg 0.4%
アスピリン100mg.3%
有害事象は3群で変わりなし
◯感想
比較的デザインがしっかりしたstudyではある。
ただ、バイエル社からの資金提供があることには注意が必要
確かに、リバロキサバンによる抗凝固療法はアスピリンに比べて静脈血栓症の再発は少ないのかもしれない。
平均年齢は55歳前後で、誘因がはっきりしている静脈血栓が6割弱、静脈血栓症の既往が有るのは2割弱で肥満のグループなので、普段自分たちが診ることが多い高齢者にはそのまま適応出来ないかもしれない。
特にリバロキサバンによる出血の評価はこのstudyだけでは困難かもしれない(実際にメタアナリシスではリバロキサバンの出血リスクは高い。。)
なお、誘因が明らかな静脈血栓症でも再発が意外に多い印象。
比較的若年で、体重も重めで、静脈血栓症のリスクが高い場合は少なくとも抗凝固療法を6ヶ月で終了せずに延長したほうが良いのかもしれないが、出血リスクとの兼ね合いにはなる。。
静脈血栓症の2次予防における抗凝固療法と抗血小板療法の比較
Apixaban for extended treatment of venous thromboembolism. - PubMed - NCBI
P:静脈血栓症を発症した患者
I:ワーファリン、アスピリン、DOAC
C:プラセボ/経過観察
O:静脈血栓症の再発、major bleeding
systematic reviewとネットワークメタアナリシス
Medline (1950 to present), Embase(1980 to present), the Cochraneと比較的網羅
他に手作業で関連してそうな論文も網羅
無症候性の静脈血栓症のstudyは除外
静脈血栓症の2次予防を評価したRCTを調査
2人の評価者が別々に評価
結果
12のRCTを解析。
エビデンスネットワーク
結果
プラセボ/経過観察に比べて全ての介入で静脈血栓症の再発が低下。
ワーファリンは通常量では再発に関してオッズ比0.07だが、major bleedingのリスクはオッズ比5.24
少量のワーファリンでは再発のオッズ比0.28、major bleedingのオッズ比4.77
一方アスピリン100mgは再発のオッズ比0.65、major bleedingのオッズ比1.29
⇒ワーファリンに比べてアスピリンは静脈血栓症の予防効果は低いが、出血リスクは低い。
DOACではリバロキサバン20mgは再発のオッズ比0.17だがmajor bleedingのオッズ比20.79とワーファリンより出血リスク高い。
ダビガトロバン150mg×2/dayも出血リスクはワーファリンほどではないがアスピリンより高く major bleedingのオッズ比2.79 、 再発リスクはオッズ比0.09とワーファリン並。
アピキサバンは再発リスクのオッズ比が0.18と低容量ワーファリンよりも優れているにも関わらず、major bleedingのオッズ比0.19-0.46と出血リスクも少ない
この結果だけ見ればアピキサバンが良さそう。 ただ1つのRCTのみ
Apixaban for extended treatment of venous thromboembolism. - PubMed - NCBI
⇒今後の追試を待たないと本当のところはわからないかもしれない。。
アスピリンもプラセボに比べれば静脈血栓症の2次予防の効果があり、出血リスクも低いので、金銭的な問題やフォローの問題で抗凝固療法が使えない場合や、1度きりのVTEエピソードで抗凝固療法がためらわれる場合にはありかもしれない。
ただ、アスピリンは抗凝固療法ほどの再発予防効果ないことに注意。
ワーファリンは再発予防効果は十分あるが、出血リスクも高くなる傾向はありそう。
潜在性甲状腺機能低下症の高齢者への甲状腺ホルモンの補給について
N Engl J Med. 2017 Apr 3. doi: 10.1056/NEJMoa1603825.
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1603825#t=article
P 65歳以上で潜在性甲状腺機能低下症の患者(遊離サイロイドホルモンは正常で、TSHが4.60~19.99mIU/L)
I 甲状腺ホルモン投与(TSHで投与量調整)
*50μgで開始 50kg以下・冠動脈疾患がある場合は25μgで開始
C プラセボ
O
primary outcome:甲状腺機能低症に関する症状のスコア、甲状腺に関連した質問表における疲労度のスコア
double-blind RCT
ブロック法で割り付けしている
施設、性別、甲状腺ホルモンの開始量で層別化
数もおおむね足りていそう。
modified intention to treat解析
平均年齢は75歳前後
ベースラインは両群で変わりなし
なおTSHの平均値は6.3-6.4前後
TSHのレベルは当然補給したら低下。
しかし臨床的なアウトカムは両群で差はない結果に
有害事象に関しても明らかな差はない
◯では実際どうするのか?
潜在性甲状腺機能低下症の治療基準としては(妊娠、挙児希望除く)
Up to dateによると。
TSH>10m U/L ⇒治療
有症状の時はTSHの値と年齢によって治療となっている。
⇒TSHが6.9以下ならば高齢者なら治療を推奨しないとなっている。
なおTSH>10で治療するのは有意に心血管リスクが増えるから(下記論文)
JAMA. 2010 Sep 22;304(12):1365-74. doi: 10.1001/jama.2010.1361
この論文はまさに、平均年齢は75歳前後でTSHの平均値は6.3-6.4前後なので、上記のUp to Dateの推奨では治療をしない群にあたる。
このような患者群では基本的に治療は必要ないかもしれない。
ただ、TSHの平均がもう少し高いと、本論文は適応出来ないかもしれない。
結局65-70歳以上の高齢者でTSH 7-10前後に関しては、症状と心血管リスクなどを考慮して個別に決めるしかないのかもしれない。
39歳のジンバブエの男性のsevereな頭痛
以下ネタバレ注意
1ヶ月前からの頭痛。徐々に増悪傾向
入院当日に嘔吐。
頚部痛も伴い、羞明もあった。
聴力障害、視力症状、痙攣、皮疹なし
外傷もなく、体重減少、寝汗、咳、呼吸困難なし
もともとNIDDMと診断され、メトホルミンとSU薬が処方
HVIの検査はしたことがなく他に薬は飲んでない。
トラックの運転手 妹がNIDDM タバコ・アルコール無し
BT36.8度 他バイタル安定
意識清明 neck stiffnessあり 項部硬直も
他身体所見問題なし
マラリアを示唆する塗抹所見なし
ルンバール→初圧25cm
見た目clear
細胞数増加なし。 蛋白47.5と軽度上昇
→ひとまずペニシリンとクロラムフェニコールがスタート
◯感想
どう考えてもまずは髄膜炎を考えるが所見が乏しい。
ならば髄膜炎の鑑別疾患を考えると話が速い(Pivot and Cluster)
特に無菌性髄膜炎の鑑別疾患
・細菌性:細菌性髄膜炎(Must rule out)
・梅毒:神経梅毒
・真菌:クリプトコッカス
・その他:ライム病
自己免疫疾患
・SLE、ベーチェット
悪性腫瘍
薬剤
・NSAIDS
・ST合剤
gradualであり通常の髄膜炎の経過ではない
→梅毒、真菌、結核、悪性腫瘍など
髄膜炎の鑑別
◯実際の症例の思考過程
→細菌性髄膜炎の髄液所見らしくはない
またAcute HIV infectionであれば、細胞数増加や皮疹、咽頭痛などが出現するが特にそれもない。
ただ地域がら、HIVの流行地域。
HIVがあるとすれば、亜急性髄膜炎の鑑別はクリプトコッカス、結核の2つをまず考える
このケースでは髄液の白血球が全く動いていない。
また結核では髄液の血糖が低下することが多い
これは結核よりもクリプトコッカスをどちらかというと示唆
DM+HIVはクリプトコッカスのリスク
ただ実際は区別するのが難しいので、髄液クリプトコッカス抗原や墨汁染色が必要
◯結局
HIVは陽性、最終的には慢性HIV感染症に合併したクリプトコッカス髄膜炎と診断。
クリプトコッカス抗原の結果が分かる前に、抗真菌薬も開始
ちなみにリソースが限られた国ではアムホテリシンB(リポゾーム製剤)+フルシトシンではなく、アムホテリシンB+フルコナゾール高用量になるらしい。 フルシトシンは高価
アムホテリシンBでは電解質異常が必須、なので電解質の補正とモニタリングはリソースが限られた状況での生存率を上げる
髄液圧が高いので、髄液を治療的に頻回に抜く必要がある
このような髄液のWBCが低い状況でHIVの治療をはじめると死亡率が上がるので、抗真菌薬をはじめてから4-6週後にHIVの治療を始めるべきとされている
膝関節置換術後の自宅でのリハビリは院内のリハビリに劣らないかもしれない。
jamanetwork.com
シドニーで行われた試験
P :関節形成術専門施設でTKAを受けた患者
I :10日間の入院リハビリテーションを行ったあと在宅リハビリ単独で行う群
:10日間の入院リハビリテーションを行ったあと自分の意思で在宅ベースプログラムを選択した群
C : 10日間の入院リハビリテーションを行ったあと入院でリハビリを行いその後在宅でリハビリを行う群
O:
主要アウトカム:術後 手術後26週間の6週間の歩行テスト。
副次的アウトカム: 疼痛 Oxford Kneee Score(機能の評価)、QOL
結果
入院+在宅群に81例
在宅単独群に84例
自分の意思で在宅ベースプログラムを選択した群に87例
165人の無作為化された参加者のうち、68%が女性であり、平均年齢66.9歳であった。
入院リハビリテーションと2つの在宅プログラムグループで6分間の歩行試験でも、 Oxford knee score、QOL(EQ-5D visual analog scale)において有意差はなかった
退院後の合併症の数は、入院群が12、在宅群が9であり、有害事象は報告されていなかった。
結論
合併症のない全例の膝関節形成術を受けた成人のうち、入院患者のリハビリテーションとモニタリングされた在宅ベースのプログラムと比較した場合、術後26週間のアウトカムは変わらなかった。
◯感想
比較的若年者で合併症が少ないグループだからこその結果かもしれない。
高齢者では入院でモニターを比較的長期間したほうが良いかもしれない。
あとは、本人の頑張りと家族やサービスが在宅でどれだけ使えるかも大きいだろう。
ただ、比較的若年者で本人の意欲が十分ありサポートが可能ならば、膝関節置換術後は早期に退院し在宅でリハビリが可能なのかもしれない
誘引のない静脈血栓症に対するアスピリンの効果
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1114238#t=article
Aspirin for Preventing the Recurrence of Venous Thromboembolism
n engl j med 366;21 nejm.org may 24, 2012
今更ですが、有名な論文なので読んでみました。
P 誘引のない静脈血栓塞栓(近位のDVT and/ or 肺塞栓)をはじめて発症し6~18ヶ月のワーファリンを投薬した18歳以上の患者
Exclusion
抗リン脂質抗体など明らかな凝固異常がある
活動性悪性腫瘍
静脈血栓症の一時的な危険因子がある
抗凝固中の静脈血栓症の再発
アスピリンアレルギー
他に、長期抗凝固療法の適応疾患が併存
NSAIDSの使用
平均寿命6ヶ月未満
12ヶ月以内の消化性潰瘍
I アスピリン100mg/day
C プラセボ
O primary outcome:静脈血栓塞栓(DVTと肺塞栓の複合エンドポイント)の再発 sefety endpoint: major bleeding
多施設のRCT double blind
検出力80%で合計400人の患者が必要→数は概ね足りている
ランダム化した結果、両群のベースラインに違いなし
→ITT解析 フォローアップは適切
結 果
・静脈血栓塞栓の再発
アスピリン群 205 例中 28 例 (年 6.6% )
プラセボ群 197 例中 43 例であった (年 11.2% )
ハザード比 0.58,95%信頼区間 [CI] 0.36~0.93 p=0.02
出血や死亡は両群で変わりなかった
5人の患者でstudy drugによる副作用で中止になっている。うち3人は胃痛だが2人はプラセボで1人はアスピリン
◯感想
比較的たしかなデザインのstudy。
誘引のない静脈血栓症で抗凝固療法を6-18ヶ月行った患者の2次予防としてアスピリンは有用な印象。
ただ、癌や明らかな凝固異常、明らかな出血エピソードがある患者は除外。
Up to Dateによると通常誘引のない近位DVT or 肺塞栓で出血リスクが低い場合初発は、永続的な抗凝固療法をsuggest、再発している場合は永続的な抗凝固療法をrecommendであり、抗凝固療法がなんらかの理由で使えない場合はアスピリンを考慮してもよいとされている。
実際に、抗凝固療法に比べ出血は少ないかもしれないが、静脈血栓症の予防効果は低いと思われる。
使うとすれば、初発の誘引のない静脈血栓症で積極的な治療を望まず、フォローも難しい場合には考慮しても良い??