片側性の仙腸関節炎
若年男性の片側性仙腸関節炎 鑑別は??
片側性なら普通は感染症を考える。
ただ、国内発症は極めて稀。
獣医の業界で話題になっている。
http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0903_03.pdf
ブルセラ症のsystematic review(というかこんなのあるのね。)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3516581/pdf/pntd.0001929.pdf
やはり、日本では極めて稀
ブルセラ症自体が多彩な症状をきたす。関節炎は必須ではない
ブルセラ性の関節炎のレビュー
症状としては発熱はほぼ認める。ただ腰痛は6割ほど。
筋肉痛や頭痛、食欲不振など全身症状も認める
診断にはELISAが有用 血培は長期間の培養が必要 感度は高くない
罹患関節は仙腸関節、膝、股関節で多い
では感染性仙腸関節患者で多い原因は?
感染性仙腸関節炎患者21人を解析した中国からの報告(原文は中国語。。)
男性が9人、女性が13人。
(85.7%)の患者は片側性の仙腸関節炎。
8人(38%)が結核性(TSI)
3人(14%)がブルセラ(BSI)
非ブルセラ・非結核性仙腸関節炎ではCRPやESRが著増したと。
6人のISI、2人のBSI、および4人のTSIを含む12人の患者が病理学的に診断された。
おそらく、化膿性の仙腸関節炎のことと思われる。。
化膿性仙腸関節炎の報告は、2007年の日本からの報告によると化膿性仙腸関節炎 は 145例(小児 81例)の文献報告がされており、稀な疾患。
http://www.jspid.jp/journal/full/01902/019020175.pdf
さらに多彩な症状をきたしうるため、診断が難しいと。
感染経路は、皮膚・血流感染・打撲などの外傷があげられる。
腹膜刺激徴候を有する強い腹痛を伴うこともある。
起因菌としてはブドウ球菌が最多。
Pregnancy-Associated Pyogenic Sacroiliitis: Case Report and Review
妊娠関連の化膿性仙腸関節炎レビュー。
平均年齢は25.4歳。
妊娠とや産褥、流産後との関連がある。
リスク因子として、injection drug、感染性心内膜炎、尿路感染、子宮内膜炎など。
●臨床的な特徴
大部分の症例(66.7%)は、急性発症(<7日間)
潜伏期間は、2〜32日。
局所の痛み:100%
仙腸関節の圧痛:80%
歩行困難:47%
33.3%で発熱がなかった。
なお、血培の陽性率は40%、関節液の培養陽性率は75%とされている。
診断にはMRIが有用
仙腸関節の炎症が仙骨や腸腰筋など周囲の組織へ波及しうるため、多彩な症状を呈すると考えられている。
なお、化膿性仙腸関節炎は30歳未満が全体の80%を占める。
これは仙腸関節の可動性および血管新生が同年代でピークだからであると考えられている。
下記の報告のように坐骨神経痛と誤診されることもある。
Postpartum septic sacroiliitis misdiagnosed as sciatic neuropathy. - PubMed - NCBI
60歳以上は全体の3%のみという報告もある。
http://www.semarthritisrheumatism.com/article/S0049-0172(96)80010-2/abstract
ということで。。。
片側性仙腸関節炎をみたら、感染症を考える。
化膿性と結核、ブルセラを考えるが、ブルセラは少ない。
化膿性仙腸関節炎は若年者に多く、坐骨神経痛と誤診されうる。
巨細胞性動脈炎 mimic の感染性心内膜炎
高齢男性。
新規発症の両側頭部痛。炎症反応上昇。霧視。
顎跛行や側頭動脈の身体所見・エコー所見は乏しく、造影CTで大動脈炎の所見はなし。
ただ臨床的に巨細胞性動脈炎否定できず、専門科に転院。
そちらで眼底検査するも虚血性視神経症の所見なし。やはり側頭動脈のエコー所見も乏しく非典型的。
後日、当院および他院の血培からStaphylococcusが全セットで陽性。CNS。
感染性心内膜炎が疑わわしい。
そもそも、GCAは視覚障害をきたすために出来るだけ早く診断して治療しないと視覚障害を残す。
高齢者の頭痛の鑑別で重要だが、緊張性頭痛likeの非典型例もあり診断が遅れてしまい、視力障害をきたす例もある。 J Neurosci Rural Pract. 2014 Oct-Dec; 5(4): 409–411.
Giant cell arteritis or tension-type headache?: A differential diagnostic dilemma
リウマチ性多発筋痛症の鑑別疾患として常に感染性心内膜炎があがる。
全身の筋肉痛・肩・骨盤の痛み、ESR上昇でPMRと暫定診断されステロイドを開始し、後日IEであると判明した症例報告もある
また実際にGCAのような症状を呈した感染性心内膜炎の報告もある。
Subacute bacterial endocarditis presenting as polymyalgia rheumatica or giant cell arteritis
Clin Exp Rheumatol. 2006 Mar-Apr;24(2 Suppl 41):S38-40.
3人のレンサ球菌による亜急性感染性心内膜炎によって、2人がGCAのような症状。1人がPMRのような症状を認めた。
GCAlikeの症状として頭皮の圧痛、顎の痛み、視覚症状を認めた。発熱がない患者もいた。3人のうち2人が実際にステロイドで治療された。
これらの症状は感染性心内膜炎の治療で全て消失した。
なお、ややこしいことにGCAによってIEのようなvegutationをきたすという報告もあり。
Clin Exp Rheumatol. 2006 Mar-Apr;24(2 Suppl 41):S35-7.
心エコーのなんらかの異常は25人のGCAのうち13人(52%)で認められ、これは健常者(12.5%)より明らかに比率が高いと。
なので、やはり血液培養がGCAやPMRの診断にはとても有用という基本が大切ということですね。。
左側憩室炎に対しては抗生剤治療は不要???
元々2012年に非複雑性の左側憩室炎に対して抗生剤を使わなくても合併症や再発が変わらないというRCTが発表された。
Randomized clinical trial of antibiotics in acute uncomplicated diverticulitis. - PubMed - NCBI
Br J Surg. 2012 Apr;99(4):532-9. doi: 10.1002/bjs.8688. Epub 2012 Jan 30.
P 左側憩室炎(非複雑性)
I 抗生剤使用
C 抗生剤不使用
O 合併症、再発、入院期間
多施設研究 合計623人を対象としたRCT
⇒結果アウトカムは両群で同等であった。
今回、同様に左側憩室炎に対して抗生剤を使用せずに様子を見たRCTが発表された為、読んでみた。
Br J Surg. 2017 Jan;104(1):52-61. doi: 10.1002/bjs.10309. Epub 2016 Sep 30.
P CTで左側の非複雑性の急性憩室炎と診断された患者
Hinchey stages 1a–b (膿瘍径5 cm未満)
Ambrosetti CT criteria がmild
Inclusion および Exclusionの一覧
I 抗生剤群(amoxicillin–clavulanic acid) 合計10日 少なくとも最初の2日は点滴で その後内服にスイッチする。
C 経過観察群(外来治療の基準⇒通常の食事に忍容性があり、体温が38度以下、VAS score4未満,self-supportが出来る)
O primary outcome 6ヶ月の間の再発
secondory :再入院率、複雑性憩室炎(膿瘍、穿孔、閉塞/狭窄、憩室出血または瘻孔)、進行性憩室炎、憩室炎再発、重篤な有害事象、抗生物質治療の副作用、6ヶ月,12ヶ月の地点のS状結腸切除or 他の外科的/非外科的な介入、全死亡率
多施設の open labelのRCT
blindは出来ない 解析者のみblind
ブロック法でコンピューターを使ってランダム化
ASA gradeが抗生剤群で少し高めだが概ねベースラインは同等
ITT解析
非劣性試験 最低各々262人いれば良いとのこと。
Inaddition, the hazard ratio of recovery corresponding to a
non-inferiority margin of 5 days or less has been spelled
out here
結果
primary outcomeは両群で特に変わりなし。 非劣性といえる。
外来患者は経過観察群で多く、抗生剤の副作用は当然抗生剤使用群で多い。
有意差はないが、複雑性憩室炎や再入院率、S状結腸切除は抗生剤群で多いかも。。
○コメント
この結果だけを見ると軽症の左側憩室炎なら抗生剤を使用しなくてもよいかもしれない。
ただ、軽症の憩室炎であっても抗生剤なしで様子を見るのはかなり勇気がいる。
特に小さくても膿瘍形成していれば、なおさらそう。
実際、軽症の憩室炎なら外来で内服の抗生剤を使用すれば良いので、それくらいはリーズナブルな気がする。
今後メタアナリシスなどが出るまでは、なんとも言えないかも。
ただ、憩室炎であっても発症後ある程度時間が経っていて、抗生剤なしでも改善傾向の軽症のケースで、膿瘍形成も無ければ抗生剤無しで様子を見れるかもしれない。。
健康で特に症状がない患者へのピロリ菌の除菌について BMJ systematic review +コクランレビュー
http://www.bmj.com/content/348/bmj.g3174
無症状だけどバリウム健診で異常⇒萎縮性胃炎⇒ピロリ菌測定⇒陽性なので除菌という流れがあるが、どこまでやる意味があるのか??
P:ピロリ菌陽性だが、無症状で健康な患者
I:ピロリ菌除菌
C:除菌しない or プラセボ
O:胃がんの発生
検索ソース:Medline, Embase, and the Cochrane central register of
controlled trials were searched through to December 2013
言語の制限はなし
2人の評価者が別々に評価している。
RCTを対象としている
○結果
6つのRCT 述べ1560人を対象
異質性問題なし。 除菌群のほうが胃がんは少ない傾向があるかも。
ただ、胃がんによる死亡は減らすことが出来ず全死亡率も減らすことが出来ない傾向
国別の胃がんを予防するためのNNT
日本や中国ではNNTは低め⇒つまり、除菌による胃がん予防効果は欧米諸国より明らかに有効な傾向
副作用 skin rashは除菌群 3.1% 、プラセボ群 0.1% と皮疹は除菌郡で多い 他変わりなし。
なお、同様の話題でコクランレビュー有り
Helicobacter pylori eradication for the prevention of gastric neoplasia. - PubMed - NCBI
P:ピロリ菌陽性だが、無症状で健康な患者
I:ピロリ菌除菌
C:除菌しない or プラセボ
O:胃がんの発生
結果、6つのRCTをメタアナリシス
結果
○胃がんの発生に関してH.pylori除菌療法はプラセボまたは治療なしより優れていた(6件の試験、6497人の参加者、胃癌のリスク比0.66、95%信頼区間 :0.46~0.95、moderate-quality evidence)。
プラセボと比較した胃癌による死亡に関するH. pylori除菌の効果は、信頼区間が広いために不確実であった(3件の試験、4475人の参加者、RR 0.67; 95%CI 0.40〜1.11;moderate-quality evidence)。
全死因死亡率に対するピロリ菌除菌の効果は認めなかった。(4件の試験、5253名の参加者、RR 1.09; 95%CI 0.86〜1.38;moderate-quality evidence)。
有害事象のデータはほとんど報告されなかった。
結論としてはアジア人に関しては、除菌に寄る胃癌予防効果があるかもしれないが、 moderate-qualityで限定的なエビデンスと。
○結論
以上のことから言えるのは。。
アジア人では、健常者で症状がないピロリ菌感染者で除菌しても、胃癌は減るかもしれないが、死亡率や胃癌による死亡は変わるわけではない。
アジア人でこのような結果が出ているのは、ピロリ菌感染率が高いからか。
ピロリ菌感染と胃癌の関係性は以下の論文からも確からしい。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1728434/
ただ、全く無症状の患者を積極的に除菌するメリットに関してはコントラバーシャルで、悩ましいところです。。。
胃癌の家族歴・喫煙者など、胃癌のハイリスク群ではより恩恵に預かる可能性が高いのでしょうか?
今回のsystematic reviewの話題とは違いますが、実際には胃カメラで、炎症が強かったり潰瘍瘢痕があったりすれば、除菌してしまうことが多いです。
無症状で健常者であれば無理に除菌しなくても良いのかもしれませんが、最終的には患者さんと話して決めることになると思われます。
Histology Rings True
○プレゼン
エタネルセプトとメトトレキサートで治療されている58歳の非びらん性関節リウマチの患者が、2週間の経過の39℃の発熱と著名な寝汗で救急外来を受診した。
先週から目が黄色くなり、黒っぽい尿を認めた。
呼吸困難、腹痛や膨満、吐き気、嘔吐、排尿障害、易出血性、頭痛、または筋肉痛は認めなかった
○コメント
発熱の原因としては通常、感染、悪性疾患、自己免疫が考えられる。一般的ではないが、薬に対する副作用として熱を認める(訳者コメント 薬剤熱は多いけどなー)。免疫不全の患者における発熱は通常、感染であることが多い。抗TNRα製剤は、マイコバクテリアおよび真菌感染やリンパ腫のリスク増加と関連している。関節リウマチ自体が、リンパ腫のリスク増加と関連している。
目の黄染と黒っぽい尿は胆汁うっ滞を示唆されるが、肝内病変 (感染症やリンパ腫)or 肝外病変(胆石など)が考えられる。
患者の発熱を考えると、最初の優先順位は胆道系の閉塞と胆管炎を排除することである。
黄疸、黒っぽい尿(ヘモグロビン尿)は自己免疫性溶血性貧血、マラリア、clostridium perfingensの菌血症などの溶血性貧血で起こりうる。
関節リウマチの診断は再考する必要がある。分類不能の関節痛が誤って関節リウマチと診断されていることがあるからである。免疫抑制は、時折 whipple病のような関節炎を起こす感染症をマスクすることもある。
○プレゼン
十年前に手首と手の多発関節炎を認めリウマチ因子陽性であったため関節リウマチと診断した。患者の症状は、メトトレキサートとエタネルセプトで十分にコントロールされていた。他に高血圧や高脂血症の既往歴が有り、アムロジピンおよびシンバスタチンを内服していた。新規に始めた内服薬はなく、ハーブサプリメントを摂取することもなかった。適度にアルコールを飲み、タバコや違法薬物を使用していなかった。テキサス州で生まれ、カリフォルニア州のセントラルバレーに住んでいた。症状発症の1週間前に、彼はユタ州の国立公園での一週間の旅行から戻っていた。彼はホテルに滞在し、蚊、ダニ、または動物への曝露はなかった。彼は学校の先生として働いていて、30年間一人の妻と過ごしていた。
○コメント
曝露歴からブラストミセスおよびヒストプラスマの再活性化やコクシジオイデス症のリスクがありそれらは全て胆汁うっ滞性を引き起こす可能性がある。
彼が教えて子供の年齢によってはEBウイルス やサイトメガロウイルスリスクが高いかもしれない。急性A型肝炎は、発熱、黄疸をきたすが、長期間発熱が継続する点が合わない。ユタ州への彼の旅行で彼の野外活動は、動物または環境暴露を介した感染症の可能性を想起する。げっ歯類の尿が混ざった淡水への暴露がリスクであるレプトスピラ症は、発熱と黄疸を説明することが出来る。野兎病は、野兎病菌ウサギやげっ歯類への暴露によるFrancisella tularensisの感染で、発熱、肝炎を引き起こす可能性がある。
○プレゼン
体温37.3℃、PR82/分、呼吸数12回/分BP134/65mmHg,酸素飽和度98%RA。
generalは良さそうに見える。強膜および舌下に黄疸が存在し。頸静脈怒張なし。心肺音は正常。腹部検査では肝脾腫なし。右上腹部に触診で軽度の圧痛あり。浮腫、クモ状血管腫、手掌紅斑、またはリンパ節腫脹なし。関節には腫れや変形なし。
WBC6000 Hb 10.9 PLT28万 MCV85 AST179 ALT127 ALP351 T-bil:23.8 直接ビリルビン17.8 INR2.5
尿検査には蛋白尿、血尿、または膿尿なし。胸部X線検査は正常。
○コメント
患者のバイタルサインは正常範囲だが、発熱、右上腹部痛、胆汁鬱滞、黄疸、免疫不全があるので胆管炎を考えざるおえない。
WBC増加は認めないが、免疫不全ではありえる所見。さらにメトトレキセートはWBC低下・骨髄抑制を引き起こす可能性がある。L/Dは肝細胞障害と胆汁うっ滞の混合パターンを示しているが、後者がより顕著。直接ビリルビン高値の鑑別診断は肝外胆管閉塞(総胆管結石症、腫瘍、狭窄)と肝内胆汁うっ滞(ウイルス、マイコバクテリア、真菌感染症、肝膿瘍、浸潤性リンパ腫、癌、薬剤)。
INR上昇はビタミンK存在を反映しているだろうが、これは黄疸もしくは肝機能障害によるものだろう。
高ビリルビン血症と凝固障害は、どんな原因の急性肝炎後に見ることができる。この患者の貧血は鉄欠乏と炎症の貧血の組み合わせを反映している可能性がある。溶血は、直接高ビリルビン血症を引き起こすことはなく、出血の証拠はない。
○プレゼン
腹部超音波検査では胆嚢周囲の液体貯留と胆石症を認めた。胆管拡張や腹水はなかった。MRCPでは胆嚢壁肥厚と胆石を認めた。胆管拡張、総胆管結石症、fat stranding、肝実質の異常はなかった。PTGBDを行い、ピペラシリン - タゾバクタムを胆管炎として投与した。メトトレキサートとエタネルセプトを中止した。
ウイルス性肝炎の検査は陰性、ANAを提出。血清鉄は17μg トランスフェリチン119mg/dl、フェリチン423μg/l 血液および尿培養は、陰性。
○コメント
胆管結石が胆管炎の最も一般的な原因だが、画像所見ははっきりしない。ただ、胆管炎と頻度と死亡率を考えれば抗生剤を使うのはリーズナブル。PTGBDを行うのはやりすぎ。
自己免疫性肝疾患のための試験は、他の自己免疫疾患のhistoryがあるので合理的。自己免疫性肝炎患者では、ANAは、一般的に陽性であるが通常、発熱はない。原発性硬化性胆管炎および原発性胆汁性胆管炎のような自己免疫性胆道炎も、胆汁うっ滞をきたす。胆管造影が正常であれば、基本的に原発性硬化性胆管炎は除外される。原発性胆汁性胆管炎の除外目的で抗ミトコンドリア抗体は有意義だろう。自己免疫性肝疾患は、細菌性胆管炎を合併しない限り発熱は認めない。患者の内服薬は市販薬も含めてきっちりと調べる必要がある。
○プレゼン
翌週中には、患者の発熱と肝炎は改善し胆汁うっ滞も徐々に改善。しかし、ビタミンKの投与にもかかわらず、INRが2.5と3.0の間で推移し、凝固障害が継続するため、肝臓移植センターに移された。
腹痛、頭痛、筋肉痛の訴えはなかった。既に熱はなく、黄疸はなかった。PTGBDチューブが入っている以外は特に変わりなかった。血算に変化はなく、末梢血塗抹標本は正常だった。AST39 ALT26 ALP89 T-Bil 3.5mg INR 2.7、フィブリノーゲン312mg/dL。セルロプラスミンおよびα-1アンチトリプシンは正常範囲内。フェリチン817μg/L 、鉄飽和度は20%であった(基準範囲、10- 47)。ANAはspeckled pattern.で160倍。、抗ミトコンドリア抗体検査は陰性だった。血清IgGレベルが1360mg.dl(基準範囲、672-1760)。肝炎の血清学的な検査は陰性でHIVも陰性。
単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、およびEBVのためPCRは陰性だった。精製タンパク質誘導体およびインターフェロンγ放出アッセイでのツベルクリン反応検査は陰性。経胸壁心エコー検査は正常。
○コメント
ビリルビンは、多くの場合、急性肝炎後に正常化するために時間がかかるが、肝臓が回復した場合はビタミンKの複数回投与にも関わらず凝固障害が遷延するのは合わない。
AST/ALTが減少し凝固障害が遷延する場合は完全な幹細胞の壊死が示唆されるが、その場合はよりシックでビリルビンは徐々に上昇するはず。もし胆管炎が存在した場合には、胆管の減圧および抗生物質は、効果的であった可能性がある。総胆管結石の自然経過として、肝機能の迅速な正常化を認めることはあるが、画像的に確認されていない。
レプトスピラ症は、ピペラシリンによって治療されていてもよいかもしれない。肝機能は、患者が野兎病や真菌症を持っていた場合には、正常化しないだろう。CMVは胆汁うっ滞性肝疾患の他の原因であり、子供たちとの接触のリスクは有るが、検査として捉えらられていない。
toxic or 虚血性の肝炎は、self limitedである。ANA陽性であり自己免疫性肝炎も考えるが、IgGのレベルが正常範囲である点が合わない。
・・
○プレゼン
B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルス血清PCRは陰性。抗平滑筋抗体価は160倍だった。
肝生検ではリンパ球が小葉に浸潤し、門脈に非壊死性肉芽腫を認めた(A)。
さらにfibrinのリングを伴った肉芽腫も認めた(B) 脂肪肝は認めるが、脂肪性肝炎やMTXによる薬剤性肝障害の所見はなかった 明らかな壊死や線維化はなく、少数の形質細胞を認めた 抗酸菌・真菌の染色は陰性。 CMVの免疫染色も陰性 慢性の胆道閉塞やリンパ増殖性疾患の所見もなし
○コメント
肝臓の組織学的検査では、リンパ組織球浸潤といくつかの小さな非壊死性肉芽腫およびフィブリンリングを伴った肉芽腫を示している。特定の肉芽腫の変異体と特定の条件に古典的な関連性がある。(例えば、非壊死性肉芽腫及びサルコイド、壊死性肉芽腫と結核、およびフィブリンリングを伴った肉芽腫とQ熱)。これらの組織学的所見は、必ずしも特異的ではない。
自己免疫性肉芽腫性疾患は関節リウマチの併存と自己抗体の存在から疑うべき。サルコイドーシスを示唆する所見はなく、原発性胆汁性胆管炎は抗ミトコンドリア抗体因陰性であり胆汁の障害も病理学的に認めない。巨細胞性動脈炎は時々肝肉芽腫を引き起こすが、免疫抑制を行わずに頭痛や筋肉痛が改善することが考えにくい。
リンパ腫は肉芽腫性肝疾患を引き起こす可能性があるが、肝外リンパ腫の証拠がなく、生検でリンパ腫を示唆する所見はなく、リンパ腫が原因だった場合に重度の肝障害が自然に改善することは考えにくい。
免疫抑制、高熱、著名な寝汗、癌ではないこと考えると、感染症が肉芽腫性肝炎を説明する理由になりうる。肝外(例えば、肺)感染の再活性化や一次感染には症状が合わずで、真菌染色は陰性。結核の暴露もなく結核菌の染色もそまらず、培養も陰性である。
家畜(例えば、ウシ、ヤギ、羊)への曝露は、ブルセラ症またはQ熱から肉芽腫性肝炎を考えることが出来る。ブルセラ症は家畜(またはその未殺菌乳製品)との直接接触に反応して発生するものの、Q熱は動物との既知の直接接触が存在しない場合にも発生する。肝生検上の特徴的な組織所見(リング状の肉芽腫)からもQ熱を考える。
○プレゼン
Coxiella burnetiiに対する血清学的な検査は陽性だった。患者は、2週間のコースのドキシサイクリンで治療し、症状および凝固能は改善した2週間後、仕事に戻り、メトトレキサートとエタネルセプトの投与を再開した。何の後遺症も残らなかった。
○解説
診断未確定の肝障害および自己免疫抗体の存在は、自己免疫性肝炎を考えた。肝生検は、自己免疫性肝炎の典型的な織学的所見ではなく、肉芽腫性炎症およびフィブリンリング肉芽腫が判明した。これらの所見は、Q熱の特徴。
肉芽腫変化は、感染、自己免疫、悪性、薬物誘発性、または特発性肝障害で生じる。
播種性真菌およびマイコバクテリア感染は、感染性肉芽腫性肝炎の症例の大多数を占めている。他には野兎病菌の感染症、エルシニア症、放線菌症、バルトネラ感染、ブルセラ症。ウイルス感染症(例えば、CMVまたはEBVによる感染)も考えられる。
肉芽腫性肝炎の非感染性の原因は、原発性胆汁性胆管炎、血管炎、薬物(例えば、アロプリノール)により誘発される肝障害、異物の注入、いくつかの原発性肝腫瘍、およびリンパ腫が含まれる。サルコイドーシスは、古典的には類上皮細胞の非壊死性肉芽腫と関連がある。
フィブリンリング肉芽腫は、中心の脂肪およびフィブリンリングと炎症性肉芽腫によって特徴づけされている。Q熱だけの特徴ではないが、フィブリン環状肉芽腫を有する23人の患者のうち10人(43%)がこの感染症を有することが示された。フィブリンリング肉芽腫はまた、リーシュマニア症、トキソプラズマ症、EBV肝炎、およびアロプリノール過敏症でも起こりうる。
Q熱は、細胞内細菌によって引き起こされる世界的な人獣共通感染症である
ほとんどの人は後に無症候性のまま。潜伏期間は2-3週間。
急性Q熱は、高温、頭痛、肺炎、肝炎によって特徴付けられる。心筋炎および髄膜脳炎はまれな合併症。慢性Q熱は免疫不全患者や妊娠中の患者でリスクが高い。血管内感染症では内膜炎を認める。 血清学的検査は急性および持続性感染の診断に有用。ドキシサイクリンは、心内膜炎なしで妊娠していない成人で選択される抗生物質。
ANA陽性とこの患者における抗平滑筋抗体価、ならびに自己免疫疾患のhistoryがあるので、発熱や胆汁うっ滞が非典型的であると認識されていたにもかかわらず、自己免疫性肝炎と考えられた。自己免疫性肝炎の診断は自己抗体(ANAおよび抗平滑筋抗体)、高IgGレベル、ウイルス性肝炎の不在、および組織学的所見の存在を必要とする。生検結果から、この診断を除外した。自己抗体は、多くのリウマチ症状の特徴であるだけでなく、悪性状態、薬物療法、および感染症に関連して存在する。 ANAは、Q熱の患者の12〜35%で報告されており、抗平滑筋抗体は、30〜65%で報告されていいる。9リウマチ因子、抗好中球細胞質抗体、および抗二本鎖DNA抗体もまた、一部の患者で報告されている。
組織学的所見におけるリングが真実であった。
A型肝炎 レビュー
東南アジア帰りの若年者・黄疸・トランスアミナーゼ著明高値。
A型肝炎について勉強してみました。
A型肝炎ウイルス感染は世界的に発生し衛生状態の改善奥に途上国で問題なっている。 HAVは、環境的に安定した一RNAウイルスであり、主に糞便 - 経口経路、人から人への接触、または汚染された食物および飲物の摂取によって伝達される。 HAV感染につながる主な原因として、生の甲殻類、特に牡蠣および二枚貝の経口摂取が挙げられる。これらの貝類は、filterを介して、下水を含む周囲の水からウイルスを濃縮し、結果として消費者に健康上の脅威をもたらす。
nternational Food Research Journal 16: 455-467 (2009)
以下 Up to Dateより
●リスクファクター
衛生状態の悪い地域への住居または旅行、A型肝炎を患う他の人との同居 or性的接触、MSM、公共施設やデイケアでの暴露、違法薬物などがあげられる。
●潜伏期間
通常、28日 (平均 15 から 50 日)
●症状
突然発症の吐き気、食欲不振、発熱、倦怠感、腹痛
●肝臓外症状
Leukocytoclastic vasculitis
関節炎
糸球体腎炎
クリオグロブリン血症
視神経炎
横断性脊髄炎
中毒性表皮壊死
心筋炎
血小板減少
赤血球形成不全
●検査所見
血清トランスアミナーゼの上昇(> 1000)、血清ビリルビンの上昇(最大10mg / dL)。
血清トランスアミナーゼはウイルスへの曝露から約1ヶ月後にピークに達し、その後約75%/weekで減少する。
血清ビリルビン濃度は、通常、2週間かけてピークのレベルから徐々に低下する。
INR>1.5、意識障害があれば劇症肝炎を示唆するが、B型肝炎やC型肝炎に比べれば稀。
●診断
上記のリスクファクターの接触があり、かつ上記の症状や検査所見が潜伏期間に矛盾なく出現することで疑う。
IgM抗体が診断に有用で、急性期や回復期にも検出可能でさらに、3-6ヶ月陽性になりうる。
IgM陰性、 IgG陽性は既感染を示唆。
●鑑別疾患
●B型、C型、D型およびE型肝炎
●EB virus , サイトメガロウイルス。
●黄熱病ウイルス
●単純ヘルペスウイルス
●アデノウィルス感染
●HIV感染
●薬物誘発肝障害(DILI)
●Budd-Chiari症候群
●自己免疫性肝炎
●ウィルソン病 -
●治療
A型肝炎ウイルスの感染は、通常、自然に治るため、治療は支持療法になる。 肝障害を引き起こしたり、肝臓によって代謝される可能性のある薬物は注意して使用する必要がある。 完全な臨床的およびL/Dの回復は、患者の85%において3ヶ月以内に観察され、ほぼすべての患者は6ヶ月間で完全に回復する。
万が一、重篤な場合は肝移植の適応
早期胃癌におけるピロリ菌除菌による2次予防 rct
ピロリ菌の除菌について少し最近悩んでいます。
萎縮性胃炎でも全例除菌すべきか。
ひとまず、胃癌の2次予防の効果はまず確からしいようですがその根拠となったrctを読んでみました。
P 20-79歳で早期胃癌と診断 OR 新規に診断され内視鏡的な治療をしようとした患者 OR 内視鏡的な治療をした後にフォローをしている患者
除外 ピロリ菌感染がない 内視鏡的治療後に別の胃癌を発症 胃手術の既往歴
I ピロリ菌を除菌(ランサップ400の保険適応治療)
C ピロリ菌を除菌しない群
O Primary endpoint:新規の癌
日本の51施設の多施設研究
open label ただ解析者は割り付けをブラインドされている
computer-generated listで割り付け
割り付けのベースラインは両groupで均等
modified ITT解析であり脱落者は解析出来ていない
各群最低234人必要⇒人数は足りている
◯結果
modifi ed intention-to-treat populationにおける癌の再発
除菌群: 14.1 cases per 1000 personyears
コントロール群 40.5 cases per 1000 person-years
hazard ratio 0.339, 95% CI 0.157–0.729, p=0.003
明らかに除菌をしたほうが癌の再発は減っている。
ITT解析ではないが、それを差し引いても明らかな効果あり。
hard outcomeでありopen labelだが問題ないか。
他 studyの質も問題なさそう。
やはり、早期胃癌に対するピロリ除菌による癌の二次予防の効果は確からしいと言える。