GIMブログ(あくえりの暢気にジェネラル)

JCHO東京城東病院総合診療科の森川暢によるブログです。総合内科と家庭医療が融合した、病院総合医の理想像を追い求めています。夢は、理想的な病院総合医のシステムの確立と普及です!今日の時代におけるGIMは、診断学や内科マネージメントに加えて、家庭医療学を専門にする必要があると考えています。このブログでは徒然なるままに思うところを書いていきます。

健康で特に症状がない患者へのピロリ菌の除菌について BMJ systematic review +コクランレビュー

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http://www.bmj.com/content/348/bmj.g3174

 

無症状だけどバリウム健診で異常⇒萎縮性胃炎⇒ピロリ菌測定⇒陽性なので除菌という流れがあるが、どこまでやる意味があるのか??

 

P:ピロリ菌陽性だが、無症状で健康な患者

I:ピロリ菌除菌

C:除菌しない or  プラセボ

O:胃がんの発生

 

検索ソース:Medline, Embase, and the Cochrane central register of

controlled trials were searched through to December 2013

言語の制限はなし

2人の評価者が別々に評価している。

RCTを対象としている

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○結果

6つのRCT 述べ1560人を対象

 

 

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異質性問題なし。 除菌群のほうが胃がんは少ない傾向があるかも。

 

 

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ただ、胃がんによる死亡は減らすことが出来ず全死亡率も減らすことが出来ない傾向

 

 

国別の胃がんを予防するためのNNT

日本や中国ではNNTは低め⇒つまり、除菌による胃がん予防効果は欧米諸国より明らかに有効な傾向

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副作用 skin rashは除菌群 3.1%  、プラセボ群 0.1% と皮疹は除菌郡で多い 他変わりなし。

 

 

なお、同様の話題でコクランレビュー有り

Helicobacter pylori eradication for the prevention of gastric neoplasia. - PubMed - NCBI

 

P:ピロリ菌陽性だが、無症状で健康な患者

I:ピロリ菌除菌

C:除菌しない or プラセボ

O:胃がんの発生

 結果、6つのRCTをメタアナリシス

結果

胃がんの発生に関してH.pylori除菌療法はプラセボまたは治療なしより優れていた(6件の試験、6497人の参加者、胃癌のリスク比0.66、95%信頼区間 :0.46~0.95、moderate-quality evidence)。

プラセボと比較した胃癌による死亡に関するH. pylori除菌の効果は、信頼区間が広いために不確実であった(3件の試験、4475人の参加者、RR 0.67; 95%CI 0.40〜1.11;moderate-quality evidence)。

全死因死亡率に対するピロリ菌除菌の効果は認めなかった。(4件の試験、5253名の参加者、RR 1.09; 95%CI 0.86〜1.38;moderate-quality evidence)。

有害事象のデータはほとんど報告されなかった。

 結論としてはアジア人に関しては、除菌に寄る胃癌予防効果があるかもしれないが、 moderate-qualityで限定的なエビデンスと。

 

○結論

以上のことから言えるのは。。

アジア人では、健常者で症状がないピロリ菌感染者で除菌しても、胃癌は減るかもしれないが、死亡率や胃癌による死亡は変わるわけではない。

アジア人でこのような結果が出ているのは、ピロリ菌感染率が高いからか。

ピロリ菌感染と胃癌の関係性は以下の論文からも確からしい。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1728434/

 

ただ、全く無症状の患者を積極的に除菌するメリットに関してはコントラバーシャルで、悩ましいところです。。。

胃癌の家族歴・喫煙者など、胃癌のハイリスク群ではより恩恵に預かる可能性が高いのでしょうか?

今回のsystematic reviewの話題とは違いますが、実際には胃カメラで、炎症が強かったり潰瘍瘢痕があったりすれば、除菌してしまうことが多いです。

無症状で健常者であれば無理に除菌しなくても良いのかもしれませんが、最終的には患者さんと話して決めることになると思われます。