GIMブログ(あくえりの暢気にジェネラル)

JCHO東京城東病院総合診療科の森川暢によるブログです。総合内科と家庭医療が融合した、病院総合医の理想像を追い求めています。夢は、理想的な病院総合医のシステムの確立と普及です!今日の時代におけるGIMは、診断学や内科マネージメントに加えて、家庭医療学を専門にする必要があると考えています。このブログでは徒然なるままに思うところを書いていきます。

慢性偽性腸閉塞(CIPO)について

慢性偽性腸閉塞について少しお勉強。

 

偽性腸閉塞症(pseudo-obstruction)は、腸管の蠕動運動が障害されることにより、機械的な閉塞機転がないにもかかわらず腹部膨満、腹痛、嘔吐などの腸閉塞症状を引き起こす疾患である

慢性偽性腸閉塞症 Chronic Intestinal Pseudo-obstruction (CIPO)とは | 慢性偽性腸閉塞のインフォーメーションサイト

 

つまり、慢性の大腸の著名な拡張があるにも関わらず上下部内視鏡、造影CTなどで異常がないというのが基本的な前提条件

 

このうち急性の偽性腸閉塞をOgilvie症候群、慢性の偽性腸閉塞を慢性偽性腸閉塞(Chronic Intestinal Pseudoobstruction:以下CIPO)と呼ぶ

 

慢性偽性腸閉塞の原因

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2712158/

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神経の問題、傍腫瘍症候群、DM、アミロイドーシス、薬剤性などが原因

実臨床では、薬剤性 神経疾患、DMが多い印象。

特に薬剤性は介入可能であり、必ず考える必要あり。

 

 

The great masquerader of malignancy: chronic intestinal pseudo-obstruction

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他にはMSA,パーキンソンなどの神経疾患

SLEなどの抗核抗体関連疾患

放射線治療後、先天性疾患なども原因に

 

●症状

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2712158/


再発性の腹痛、腹部膨満、便秘、嘔吐(無くても良い)、体重減少

拡張した腸管と著名なairの存在が重要

症状を繰り返すが、時に不必要な手術をされてしまうことも。

ただ、実際に症状が激しい場合は手術も必要。

 

進行性の病態で予後は不良で致死的になりうる

手術やTPNの合併症も多い

 

急性期はN-Gチューブを使って絶食、補液。

エリスロマイシンやネオスチグミンなどで腸蠕動を賦活化

症例によっては腸内細菌の増殖を防ぐために全身性 or 非吸収性抗菌薬を

 

慢性期にはmetoclopramide, domperidone, bethanechol or neostigmineなど腸蠕動促進薬を使う。エリスロマイシンも使用する。

 

なお慢性偽性腸閉塞は傍腫瘍症候群としても知られる

特に抗Hu抗体(小細胞癌に特徴的)が傍腫瘍症候群関連CIPOで高率に陽性に

The great masquerader of malignancy: chronic intestinal pseudo-obstruction



実際に小細胞癌に難治性CIPOを合併したが、小細胞癌の治療をするとCIPOが改善したという症例報告も(やはり抗Hu抗体も陽性)

http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/048060439j.pdf

ということでCIPOを診断したら傍腫瘍症候群などの原因検索が大切ということ。